※注記※
(本稿はサンドボックスα・バージョン365(10月06日時点のビルド)にて執筆)
本作は磁気嵐の影響により飛行機が北カナダに墜落し、乗っていたプレイヤー(性別は選べる)が辺境地を生き延びようとする作品だ。
昨今サバイバルゲームは飽和感を覚えるほど増えたが、現状、存在しているタイトルの中で最もストイックなサバイブ要素を持つ作品が本作『The Long Dark』だ。ひたすら生き延びることに強く焦点を合わせたゲームデザインは素晴らしく、プレイヤーが対峙するのはゾンビでもなければ他人でもない、自然そのものなのである。
ここで本作のサバイバル要素を記そう。大自然の中では怪我もすれば病気にもなるし、飢えもあれば乾きもある。動物との対峙もあれば狩りをすることもある。そして極寒の地を舞台にしているため体温の管理が重要で、上等な衣服を着ればそれだけ保温力も上がるが、体温が下がりきれば容赦なく死ぬ。死に対しての容赦のなさ、これが本作の持つ厳しさであり、その厳しさこそが魅力なのだ。極寒の地での大自然との向き合い方、付き合い方をどうするか、それがこのゲームにおいては肝要となる。
また厳しい重量制限の中、どうアイテムを管理しどの様に扱うかの英断がプレイヤーに求められる。これ以上火をおこす為の材木を持って歩けない、だが吹雪がやってきたらどうする? この先で食料が手に入るか分からない、だがこれ以上持ち歩けばスタミナが削れて狼に襲われたときに走れない。そういった状況での振る舞い、要所要所での思慮深さが求められる。その上、死は恒久的なもので容赦なくセーブデータが消去される。これはどの難易度でも変わりない。
拠点となるキャビンや屋内で時間が経過し天候が吹雪等になれば建物の揺れる音(家鳴り)で分かる仕様となっており、動物の足音などもあるのでサウンドも重要な役割を担っている。
本作には現段階では地図の概念がなく、目で見て歩いて自身で地形を覚える必要がある。その泥臭さは人を選ぶが、どうしてもプレイを厳しく思うのなら、コミュニティガイドにある地図を利用して楽しむのもアリだろう。勿論泥臭く手探りで遊ぶのだってとても楽しい。その選択はあなた次第だ。ただしマップはランダム生成される訳ではないので一度見てしまったらもう引き返せない事には注意すべきだろう。
また、要素が複雑で死にやすい作品なので難しすぎるのではないかという懸念もあるだろう。だが安心して欲しい。難易度は数種類あり、下げれば野生動物はむやみに襲ってきたりはしないし、アイテムの入手もかなり楽になる。イージーであれば、放浪して自給自足の暮らしを楽しむのに打って付けの難易度だ。それ以外は野生動物が襲いかかってくる事があり、ハードなサバイバル体験を望むならデフォルト以上が望ましい。
更にマップも複数の種類がありその間を往復する事も可能だ。どこに拠点を構えるか、はたまた一度決めた拠点を移動するか、それは手持ちのリソースや気分によって決めて良い。ただし持ち運べるアイテムには重量制限があるので、引っ越しは計画的に楽しもう。この重量制限は体調によっても上限が変動する。
本作は早期アクセスゲーム(開発途中のアーリーアクセス)で、完成こそしてはいないがアップデートの頻度は高い。最終的にストーリーモードも実装されるそうだが、ストーリーの全容は明らかにされていない。しかし著名な開発者である“Raphael van Lierop”氏(Far Cry 3 の開発初期段階におけるナラティブディレクター)や“Ken Rolston”氏(『The Elder Scrolls III: Morrowind』『The Elder Scrolls IV: Oblivion』などのリードデザイナー)など名を連ねており、。それだけに完成版のクオリティには期待が高まる。本作ほど“生き抜くこと”に主眼を置いた作品は類を見ない。その完成度は高く、しかも安価だ。
もしもあなたが購入を迷っているのなら更に背を押そう。。極寒の地にやがて訪れるストーリーモードへの予習を、或いは既に十二分に面白いサンドボックスモードに身を投じようじゃないか。何しろデベロッパーである『Hinterland Studio Inc.』はプレイヤーが「少し飽きたな」と感じ始める頃にはすぐアップデートを施すほど、熱意を持って開発に挑んでくれている。ユーザーコミュニティの議論の反映も早い。買わない手はないと太鼓判を押そう。
長い闇とは孤独な夜であり、また、死を指す。
容易にやってくる死を用いて、生命を維持することが如何に大事業であるかを、本作は逆説的に教えてくれる。
さあ、早期アクセスという新雪を踏みしめる喜びを味わおう。
生きることの難しさに打ちのめされよう。
長い闇を超えて、その先で待ち受けるものに期待しよう
その足跡は、あなただけの無二の体験をもたらしてくれるのだから。