『Fallout 4』ウェイストランド・ウォーカーズ・ガイド

ゲームタイトルFallout 4
    開発元Bethesda Game Studios
パブリッシャーBethesda Softworks
     定価:7,980円

筆者:SHINJI-coo-K (池田伸次)
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Fallout 4

最初に筆者自身についての説明をしておこう。私はシリーズを通して『Fallout』の長時間プレイヤーであり、最新作『Fallout 4』のプレイ時間も 100 時間を優に越したウェイストランド・ウォーカーである。“ウェイストランド”とは本シリーズの舞台となる、荒廃した世界を指す。
発売から一年が過ぎすべてのDLCが出揃った今、『Fallout』シリーズに通底する血脈や魅力を伝えるガイドとなるよう筆を執る次第だ。本稿ではシリーズの歴史や価値観、最新作での変化などに触れていく。

◆Fallout の歴史
Fallout 4
記念すべき初代『Fallout』

『Fallout』に通底するのは「法の目がなく善悪の基準が個人に委ねられる」世界観だ。全ての行動は個人によって裁定され、場合によっては明確な答えを出してもらえない事すらある。
シリーズの歴史は長い。元を辿ればInterplay社のクォータービュー作品に遡るが、それにもルーツがあり『Wasteland』というポストアポカリプス世界を舞台にしたコンピューター RPG をひな形に『Fallout』は生まれた。1997 年の事だ。その後も 1998 年から 2001 年にかけて『Fallout 2』や『Fallout Tactics』などの派生作品が生み出された。

Fallout 4
2009 年リブート作『Fallout 3』

そして時は経ち 2009 年、シリーズは『Fallout 3』としてBethesda Game Studiosによりリブートされた。あまりに王道なヒーロー活劇に、従来のファンからは外伝的だと揶揄される事もあるが、善悪のコントラストがあいまいなクエストを搭載する等、シリーズの神髄を引き継いだ名作である。
一年後の 2010 年に発売された『Fallout: New Vegas』では元々『Fallout 2』に携わっていたメンバーが設立したObsidian Entertainmentが開発を行い、シリーズは正統を取り戻した…かのように見えた。しかし「作り込みが足りない」や、逆に「主人公のバックグラウンドが希薄なぶんロールプレイは自由になった」など、本作の評価は真っ二つに割れた。それでは肝心の最新作、『Fallout 4』はどうだろう?

◆Fallout 4 その物語の始まり
Fallout 4

本作は一言で言えば”シューターメカニクスを搭載したロールプレイイングゲーム”だ。
物語の冒頭、核戦争に突入した世界であなたは夫、或いは妻と幼い息子と「Vault 111」と呼ばれる施設に逃げ込む事になる。そしてその施設内で冷凍睡眠中に息子がさらわれ、更に伴侶は殺され…といったところで冒険が始まる。「連邦」と呼ばれる舞台は核戦争後の崩壊した世界だ。そこでは様々な派閥や陰謀があり、主人公はその渦中に身を委ねながら息子を探すこととなる。

◆Fallout 4 その進化と切り捨てたもの
Fallout 4

同じくBethesda開発のオープンワールドゲーム『The Elder Scrolls IV: Oblivion』の次作『The Elder Scrolls V: Skyrim』で要素が簡略化されたように、本作も前作と比べると要素が簡略化されている。これは幅広いプレイヤーへ向けた戦略的舵取りであり、昨今の同社の方針のようでもある。
例えば装備の耐久力というパラメータを無くしたのは英断で、戦闘のための下準備という雑事を減らすことにより物語への没入感を深めることに成功している。細々とした“内政”とも呼べるようなマネジメントは本作の目玉機能”クラフティング”に集約されている。クラフティングとは拠点の改築・増築や施設の建設、その施設を使った装備品の改造や制作を指す。本作の中でも極めて内向的な要素のためあまり好まないプレイヤーも居るだろうが、ストーリーにも密接に関わってくる重要な機能だ。

Fallout 4

また本作の素晴らしい特徴としては、一人称視点と三人称視点をシームレスに切り替えることができ、 FPS/TPS どちらでも違和感なく遊べる点が挙げられる。シリーズを追うごとにシューターとしての要素が強化されたが(『New Vegas』ではアイアンサイト、俗に言うエイムダウンサイト(ADS)を使用できるようになった)本作ではリアルタイムシューターとしての飛びぬけた躍進が見られる。
その躍進は、積極的にカバーアクションを取るよう改善された敵キャラクター AI との戦闘や、前作までは完全静止で行われていた VATS (極端なスローモーション状態で敵の部位を選択してから攻撃を行えるシステム)の強化においても見ることができる。

Fallout 4

その他細かいシステム周りでは、敵の死体やコンテナを漁るときに起こるインベントリへのアクセスがリアルタイムで行えるようになった点も挙げられる。いちいち別ウィンドウを開かなくて済むし、視認性を上げて取捨選択したい場合にはきちんとインベントリ・インターフェイスを開くことも可能だ。これは、前述したリアルタイムシューターとしての側面を強化する一助となっている。

Fallout 4

更にはまるでアドベンチャーゲームのように会話パートの比重が高くなっているのも特徴的だ。プレイヤーが取る選択によって他キャラクターはきちんとリアクションを返すし、物語の分岐も存在している。倫理の天秤をユーザーに委ねるシリーズの特徴は、この会話システムでもきちんと踏襲されている。
これまでの作品ではプレイヤーの取った行動に基づき、ゲーム側が”カルマ”というシステムで善悪を判断していた。本作からはその判断が仲間の反応によって行われるようになった。それは仲間の個性にも紐づけられ、「プレイヤー側から見て悪党だと感じる仲間が喜ぶなら、それは悪行なのだろう」、というような曖昧な基準に置き換わった。よって自分自身が善か悪か、はたまたグレーな存在なのかはよりプレイヤーに委ねられることとなる。それは善悪の基準がまだらな存在をも許容する。

◆Fallout 4 の魅力とは
Fallout 4

古くて新しいような、どこか懐かしみを覚える未来像を持つ“レトロフューチャー”を採用した世界観は魅力的で、人を裁く法が無く、個人にゆだねられる善悪の価値観はシビアで強烈な体験をもたらす。
会話システムに関しても、たとえ四種類の選択肢全てが”イエス”という意思表示しか出来ないとしても、”複数の文脈を持ったイエス”を提供する本作の多様性を私は批判しない。
倒すのに苦戦を強いられるモンスターは冒険に刺激を与えてくれるし、”伝説の敵”と呼ばれる強敵から取得できる装備品に期待を込めて挑むのだって楽しい。ハックアンドスラッシュ的だという指摘もあるが、敵を繰り返し倒す作業は必要ない。クエストを進める上で出会う敵との戦闘で充分にハック出来るだろう。

Fallout 4

物語においては主人公の息子を軸として大きな葛藤が生じるストーリーが語られ、巧妙な仕掛けによって明かされるそのジレンマにどう対処するかと迫られる終盤の展開は実にエキサイティングだ。

◆最後に

Fallout 4 は唯一無二のオープンワールドゲームだ。その体験はシューターとしての快楽もアドベンチャーとしての深みも充分に兼ね備えている。射撃の心地よさは素晴らしく、物語の巧妙さは舌を巻く出来だ。あなたが既にウェイストランド・サバイバーならば、ここまでの記述に納得を頂けたのではないだろうか。もしもまだ未踏の者ならば、これを機に是非ウェイストランドに足を運んで頂きたい。願わくば、ウェイストランドでの滞在に喜びと苦悩が等しく訪れるように。

Fallout 4

本シリーズには繰り返し用いられるフレーズがある。
「人は過ちを繰り返す」という言葉だ。
『Fallout 4』の物語は“逃れようのない汚れを引き受けながら、その中でどうやって生きていくか”という点に集約される。
それは時として強烈な喪失をも引き起こす。

世界は荒れ果て人心は乱れても、本作の本質は一糸乱れぬ姿を保っている。

本作のオフィシャルトレーラーの使用曲、「The Ink Spots - It's All Over But The Crying」は喪失を悲しむ歌である。本作をプレイしてから、この歌に込められたメッセージに思いを馳せてくれれば幸いだ。

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