外から帰ってきたら手を洗い、うがいをして暖かくして寝る。子供の頃から親にうるさく言われていた人も多いだろう。病気にならないための予防の基本であり、病気を患ったら他の人にうつさないように気をつける。そんな当たり前な予防医学というものが、忌々しく感じてしまうようなゲームがこの世には存在する。それが、今回紹介する「Plague Inc: Evolved」だ。
本作はスマートフォンで大ヒットを記録した、「新種の伝染病となって人類を滅ぼす」という他に例を見ない戦略シミュレーション作品である。PC版は長らくアーリィアクセスであったが、現在は完成版として販売されている。
ゲームのルールはマルチプレイを除く全てのモードで共通しており、どの菌でプレイするか選択した後に潜伏する国を選択し、徐々に感染を拡げていく。伝染病として存在が露呈すれば世界で対策を講じられるため、一番最初はバレないことを心がける必要がある。難易度ごとに考える戦略こそ違うが、根本的な立ち回りは変わらない。そして、勝利条件も非常にシンプルで”人類を滅ぼすこと”ただその一つである。
最初の潜伏国はプレイヤー毎に戦略が変わる。感染経路は後述するが、人の移動導線に加え、その国の気候や国家予算で感染のしやすさが変わっていく。シンプルにいえば、「貧困国でなおかつ移動経路の多い国」がベストとも言えるのだが、後々苦労することになる離島から攻めるというのも間違った選択肢では無い。
そして、潜伏した後プレイヤーがとる戦略は、基本的に存在がバレないよう心がけることだ。病気としての感染のみでしか移動手段が無いため、病状が表に出てきてしまえば病原体の存在がバレてしまう。そのため発現を最小限に抑えながら、感染手段を増やしていくのが鉄板といえる。
伝染病として環境に適応したり、致死性を高めたりと能力を改良できる。菌の能力を進化させるにはDNAポイントが必要となるのだが、感染人数の増加や新規国家への感染に応じてポイントが増えていく。ポイントは一度つかうと消滅するため、進化の選択は慎重に行おう。
ただし、人類も黙って感染を許してくれるわけではない。一度新種の伝染病として発見されてしまえば対策を講じ始め、直ぐに世界中で抗体の研究が行われるようになってしまう。研究が完了してしまうとプレイヤーは駆逐されてしまい、存在が消滅する。そうなってしまうとゲームオーバーだ。
前述したように、本作品における戦略は潜伏する事が鉄板だが、それには理由がある。それは人類に感染するプロセスと、人類を死滅させる方法が密接にリンクしているからだ。人から人へ、人から動物へ、水や空気から人へと、感染する方法は多岐に渡る。だが、人類は感染者をどんどんと隔離してしまう。その場合、他の人への感染は止まり、生き残った人が存在すればプレイヤーの負けとなってしまう。ただ唯一のシンプルなルールであるがゆえ、完全に絶滅させるという条件は実は非常に難しい条件でもあるのだ。
また、気づかれる条件として『症状が確認出来る事』も一つであるが、ランダムイベントや、定期的な健康診断で気づかれてしまう場合もある。致命的な症状でなければ抗体の開発は何十年とかかるくらい遅々として進まないが、世界的に広まった場合は症状が弱くても開発速度は急速に早くなる。全世界が開発にとりかかると1年以内で完治されてしまう。
スマートフォン版になかった要素として、PC版にはマルチプレイが追加されている。世界中を共に壊滅させるCoopモードと、どちらが先に壊滅させられるかの競争を行う対戦モードの二つだ。
更に目玉となるのはマルチプレイだけではない。公式謹製のシナリオエディターを用いる事で、非常に細かい自作シナリオを作成する事ができる。自分だけのオリジナルシナリオが作成出来ればSteamワークショップに公開する事も可能なため、自信があれば投稿してみるのも良いだろう。
テーマこそ不謹慎であるが、一度のプレイにさして時間がかからないことに加え、ストラテジー作品の魅力ともいえる戦略の構築と実行が、何度も容易に試すことが出来るのは素晴らしいといわざるを得ない。もし人類を滅ぼすことに興味を感じてしまったとしたら、是非とも一度プレイしてみることをオススメする。
外から帰ったら手を洗おう。Plague Incとのお約束だ。