ステルスアクションがメインのゲームは挙げていけば数多く存在する。
「メタルギア」であったり、「スプリンターセルシリーズ」、後発であれば「Invisible.Inc」等...
ゲームに関わる、ゲームをプレイするものなら「メタルギア」の功績を今更説明する事は無いだろう。
1987年、MSXで発売された小島秀夫プロデューサーの代表作「メタルギア」は、全てのステルスアクションの教科書と言っても間違いでは無いだろう。
潜入、破壊、救出、オマケでマニュアルプロテクト(*1)をゲームに違和感無く放り込み、ステルスゲームに不可欠な数々の要素がこの時点である程度完成している。
続いて1998年にプレイステーションで発売された「メタルギアソリッド」。
前述の要素に加え、快適なカメラワークと操作、美麗なポリゴンで表現された3Dステルスアクションは正に新境地に達したと言っていいだろう。
そして2000年、21世紀目前にいくつかの作品が各種媒体でフォロワーとして提示される。
「No one lives forever」、「PerfectDark」、「天誅」・・・それぞれ素晴らしい作品であるがゆえ、今でもステルスアクションの傑作として名前が挙がる作品群である。
では改めて今回の紹介に移ろう。
「Hitman Trilogy」、「Hitman Bloodmoney」と綿々と受け継がれるEidos.の遺伝子。
「Hitman Absolution」、「Hitman」スクウェアエニックスによって買収された後に開発された新生Eidos.による47の活躍。
今回は珍しくシリーズを通して一気に紹介したい。
「Hitmanシリーズ」の起源であり、一番最初の作品である「Codename47」はお世辞にも名作とは言い難い。本作は難易度のバランスが非常に悪く、運に左右されるミッションも非常に多かった。特に最大の問題点は、シューター作品では無いにも関わらず撃ち合いを前提としてしまっている敵の配置とレベルデザインにある。
しかしながら、のちに続く作品のスタイルを作り上げたという意味では避けては通れない作品であり、名シリーズのベースとして大きな部分を担っている。
黒のスーツに坊主頭、後頭部にはバーコード、およそ主人公らしくない容姿でありながらも、変装の名手、与えられたミッションを確実にこなす最強のプロフェッショナルという心くすぐる設定は、当時のPCゲーム界の話題を一気にさらっていった。
変装を行っての潜入、高所からの狙撃、背後からの絞殺等々、基本的なシステムとゲームの流れはほぼ仕上がっている。
また、有志による日本語化パッチが存在しているため、オリジンを知ること自体はさほど難しくはないだろう。
シリーズにおいて、一番重要なファクターを占め、他のステルスアクションゲームにも大きな影響を及ぼす事になる。
目的に対して豊富すぎる遂行手段。前作から練り直された47という人物を改めて描写したシナリオも、注目すべき点である。
前作での欠点が全体的に見直されており、不満を感じる部分は大幅に少なくなっている。
目標さえクリアしてしまえば前作では良かったが、前述の評価の追加により撃ち合いを必要せずステルスアクションとしてのゲームの構築に成功しており、任務の遂行方法の自由度が段違いに上がっている。
例を挙げれば、一番最初のミッションでは潜入方法も暗殺方法も多彩である。
目の前を歩いている郵便局員、物資の配達員、ギャングなど様々な人物に変装して入り込む。目標に対しては絞殺、銃殺、撲殺と自身が望む方法を取ることができ、その後の脱出手段もガレージにある車を奪うか、開始地点に戻って逃げるかも選択可能である。
また、武器を持ち込めば狙撃と言った手段も取ることが可能だ。
(スマートではないが、正面から全員抹殺するという選択肢もある。)
ただ、本作は褒められる点は多いが、その評価システムと武器の使い道に大きな改善点を残す事になる。
システム上、前作のように表だって銃器を使う場面はほぼ無い。消音器付きの銃であったりナイフや包丁といった刃物を使う事はあれど、発砲音の大きいライフルや重火器はデメリットの方が大きく、ゲームシステム上(最上位評価を狙うならば)使えないと言った方が正しいのである。
そのため、武器の収集という要素を持ってはいるのだが使う場面はほぼ、いやむしろ無いと言い切って良い。
持ち帰った強力な銃器を持ち込みアサルトプレイをする事も不可能ではない。
しかし、純粋なシューター作品ではないため、アサルトプレイは実際のところオマケである。
また、特殊なプレイ時には隠されたレア評価も存在しているので色々と試してみるのもいいだろう。豊富な武器に遂行手段の多さと、クリアをした後でも繰り返し楽しめることは請け合いである。個人的にはシリーズの中で一番お勧めしたい。
初代三部作の最終作にあたる。
長らく音楽の著作権問題により販売停止していたが、ようやく解決して販売再開の運びとなった。
依頼の途中で大怪我を負い逃走の後、意識不明となった47が、過去のミッションを思い出しつつ、何故そのような状況になったかの時系列をたどっていく。
昔の主要なミッションを再度追う構成になっているため、初代をプレイするのが困難であるようならばこの作品から始めてもよいだろう。
(ただし内容的には初代のラストシーンから始まるため気にする方は留意していただきたい。)
シェーダーの革新によるゲームグラフィックの向上とコンシューマーユーザーから不評であったステルス行動の高速化に加え、2で完成したそのリプレイ性の高さも健在で、初代をプレイした後でも新鮮に楽しめる。
全体としては47の記憶を辿っているせいか、雨や夜等の陰鬱なシーンが多い。
そのためプレイ前に画面の明るさをいつもよりやや高めにする事をお勧めしておく。
なお、ここまでに紹介した三作品は現在のPC環境では動作が速すぎるため、イベントシーンがほぼすべてズレてしまう上、プレイにおいても多大な影響を及ぼす。推奨したくはないのだがフレームレートの固定化を行う方法があるので、各自で対策してほしい。(ただし自己責任)
既にテーマ曲にもなっている「AveMaria」はこの作品から固定化される。
前作より発売に2年の間が空いたことで光源処理が非常に美しくなっている上、一部武器の強化システムの追加やステージをまたぐ隠密レベルが加わり、プレイの間口と緊張感を更に大きく広げている。
また、「アサシンクリード」に先駆けた大規模な「あたり判定を持った民衆」の生成を軽負荷で行っている事も、当時PCのゲーマーの度肝を抜いた。
グラフィックの話が続いたが、ゲームも同じように進化を遂げている。
人物誘導を容易に行えるようになった「コイン」、破壊工作/爆殺/誘導と多目的に使える「ポケット爆弾」の追加は、プレイスタイルに大きな変化をもたらしている。
前作までは人物の誘導を行うためにわざと武器を目の前で捨てたり発砲したり、死体を見つけさせたりとリスクを負う必要があったが、本作ではコインを投げる事でその場所に簡単に人物の誘導ができるようになり、潜入方法も豊富になった。
また、最初に着ているスーツを持ち帰る必要が出来たのもプレイにおける大きな変更点である。
今までは変装を行った後でも評価に影響を及ぼさなかったが、本作ではスーツの回収費の発生があり、評価に影響するのである。
また、上記の通り自身の隠密度はステージをまたぐようになったため、正体がバレている場合は次のステージでは見られただけで発砲される場合がある。
また本作には「事故死」という概念が追加されており、階段からの転落や圧死等で事故に見せかける事も可能になった。この場合死体を見られても事故死として扱われ発見にカウントされず、評価を上げることができる。
武器の持ち帰りや持ち込みこそ大幅に減りはしたが、自由度と言う意味では前作と比較してもタメを張るレベルであり、プレイの楽しさに変わりはない。
初期四部作は進化と成長の歴史でもあり、Hitmanシリーズの黄金期ともいえる作品群である。
誕生から内面の変化、逃れられないカルマ、青春ドラマではないが気づいたときには「47」と言う特徴のない男を追っているだろう。
彼はどこへ行くのか、それは次回「Hitman Absolution」「HITMAN」で紹介しよう。
進化したグラフィック、更にチャレンジを続けるゲームシステムの変化。変わりゆくものと変わらないその楽しさを紹介できれば幸いである。
なお、今回紹介した初期四部作はWindows XP以前の作品群でもあり、「EAX」による音声処理が行われているため、同環境下でなければ効果音が非常に薄っぺらくなってしまう。
ゲーム体験が損なわれてしまうので、エミュレーションできる環境にあるならば是非とも設定しておくことを強く推奨する。
それ程変わるものか?と思われるかもしれないが、それ程「変わる」という事だけは記述しておきたい。
*1「メタルギアのマニュアルプロテクト」
パッケージの裏にゲーム内で使用する通信コードの周波数が印刷されていて、その周波数がなければ進行不能となる。
また、ゲーム中でも違和感なく誘導されるため演出としても自然な形で取り込まれている。