RTSとタワーディフェンスの融合に成功した4X宇宙ストラテジー『AI War: Fleet Command』

ゲームタイトルAI War: Fleet Command
    開発元Arcen Games, LLC
パブリッシャーArcen Games, LLC
     定価:980円
DLCバンドル:1,680円

AI War: Fleet Command

AI Warのジャンルを一言で表すのは難しい。 多数のユニットを操り戦術目標を達成するRTSの操作体系、タワーを選別し敵を一網打尽にするタワーディフェンスの試行錯誤と爽快感、マップ拡張や技術開発の取捨選択を迫られる4Xストラテジーの戦略要素、さらにはロストテクノロジーや宇宙海賊といったスペースロマン。これら全てをミックスさせたゲームなのだが、注目すべきは、これだけの要素を詰め込みながらゲーム全体のバランスが完璧と言って良いほどに整っていることだろう。

AI War: Fleet Command

舞台はAIが大部分を支配してしまった宇宙。 ゲームの目的は、滅亡寸前の人類を導き、幾多の惑星の中からAIの拠点を探し出し破壊することだ。 人類の拠点が落とされると敗北となる。 人類 対 AI という構図は単なる舞台背景に留まらず、ゲーム性にも深く関わっている。 多くのストラテジーゲームにおいて、AI戦は対人戦を模したものであるため、AIには人間くさい行動が求められる。 時にはチートをさせてでも人間と対等に戦えるようにバランスが調整されるが、AIの出来が不十分だとどこか物足りなさを感じてしまう。 ところがAI Warでは人とAIの不均衡が大前提になっており、使用できるユニットからして全く異なるし、AIの思考パターンにも人間らしさなどは微塵も無い。 AIは、無尽蔵の戦力を有しており、100対10000の圧倒的に不利な戦いもざらに起こる。 一つのミスが命取りとなる不均衡が、この作品独特の緊張感を生んでいる。

戦闘はRTSベースで行われるが、序盤はAIとの戦力差が大きすぎるため、惑星を一つずつ奪還して資源と技術を獲得する必要がある。 ところが惑星の奪還は、同時にAIの攻撃の激化を招いてしまう。 無闇に多くの惑星を奪還すると、AIの強烈な攻撃に対処不可能=ゲームオーバーとなるため、AI母星への侵攻ルートは吟味しないといけない。 自軍の強化のために侵攻が必要だが、侵攻するとよりAIが強化される…というジレンマがゲーム全体を支配する。 達成感と緊張感を徐々に増大させるこのジレンマのおかげで、進めば進むほどゲームは盛り上がり、AI母星での最終決戦で最高潮に達する。 終盤が消化試合にならないバランス調整が見事だ。

AI War: Fleet Command

AI側からの攻撃時には、「AIが△分後に○○星を攻撃してきます」という予告がわざわざ入る。 このユニークな予告のおかげで、プレイヤーは対象の惑星にユニットを集結させ砲台を設置して、AIの侵攻に備えることができる。 防衛戦はタワーディフェンス的で、きっちりと準備すれば、時間通りに突入してくるAI艦隊を全自動で一網打尽にできる。 ただし半端な防御ではあっさり突破されてしまうし、そこにあまりにリソースを割くと前線が崩壊したり複数箇所に同時に予告が入った時に対処できなくなる。 AIに突破されると事実上ゲームオーバーになる事も多いが、ロードして予告の場面から正しく戦力配置をやり直すと、ぎりぎり対処できる絶妙のバランスになっていることに気付かされる。 まるでセーブ&ロードもゲーム性に組み込まれているかのようで、実際に優秀なオートセーブが備わっている。

AI War: Fleet Command
AI War: Fleet Command

攻防を彩るのが、宇宙ゲームならではの大規模な艦隊戦だ。 2Dのため静止画だと地味だが、何百とあるユニット種による何千何万という艦隊が、一艦単位で描写され動き回る様子は非常に賑やかだ。 またカメラを引いて戦局全体を見渡すと、艦隊運動と砲弾の軌跡が有機体のように絡み合う極めてアーティスティックな画面が現れる。 弾幕ゲームの弾幕が描く美しさと同様のものだ。 派手ながら動作が非常に軽快なのも、2Dの恩恵だろう。 言葉では伝えられないが、Pablo Vegaによる音楽も絶品で、宇宙の雰囲気作りに大きく貢献している。

AI War: Fleet Command

難点はUIだ。 この作品は宇宙地図と惑星画面の二画面とツールチップだけで構成されており、深い階層の情報は存在しない。 しかし数百種類あるユニットを把握するためのツールチップが、とにかく与えられる情報は全部放り込んでおいたという無秩序さで、得たい情報をひと目で選別するのが難しい。 導入部も悪く、チュートリアルではゲーム内要素のごくごく一部についてしか解説していないし、慣れるまでは画面で何が起きているのか把握するのも大変だ。 もっとも視覚的にはともかく操作性は悪くなく、ゲーム中のあらゆる操作に好きなショートカットを割り当てられるなど、きめ細かいコンフィグも備わっている。 また発売5年経っても頻繁なアップデートで不満点の改善と要素の追加を繰り返しているのも好印象だ。

AI War: Fleet Command

理解しなければならないことが多く、一マップに数十時間かかることもあるなど決して軽い作品ではないが、最初の山さえ乗り越えられれば、綿密に仕組まれた深いシステムに整ったバランス、多彩な要素と無限のリプレイ性に満ちた広大な宇宙が待っているだろう。

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