みなさんは普段やっているゲームにおいて、その舞台や環境がどのようなものか、注意深く観察することはあるだろうか。ゲームの内容にはよるだろうがおそらく、自分が通った道や散らかした後の惨状までは気にも留めないだろう。いくらオブジェクトがボロボロでも、ゾンビたちの死体が転がっていても、そんなものにかまけている暇なんてないはず。
しかし、ここにはそれをよしとしない者がいる!血だらけのバイオレンスな部屋に、銃ではなくモップを片手に向かう人物が!そう、それが『Viscera Cleanup Detail』の主人公だ。
このゲームにおいてプレイヤーは、あらゆるゲームで使われた後の舞台(という設定)をきれいに片付ける掃除屋になる。例えば、壁にこびりついた血痕。良くわからないギミックに挟まった死体。あちこちに見られる銃跡や割れたガラスなどがそう。部屋の中はあらゆる物でひどいことになっており、ゴミは焼却炉で、血痕や煤などの汚れはモップ、銃跡はレーザーで溶接をしていくことになる。そうして"次のゲーム(という設定)"に備え、部屋を元のとおりにしていくわけだ。掃除の最中は特に邪魔をしてくる敵、ギミックも無いため、一人で黙々とこれらの作業をしていく、それがこのゲームの内容になっている。
さて、続いてはこれらの作業をさらに詳しく説明しよう。モップでの掃除にはまず、水の入ったバケツがいる。汚れたモップを洗ってきれいにするためだ。しかし、それを繰り返していると当然、水のほうも汚れるわけで、次のバケツを用意しないといけない。汚れた水はバケツごと焼却炉へ。この焼却炉には他に、生物の死体からガラス、缶や薬きょうまで分別なんて気にせず放り込んでいく。壁につけられた無数の銃跡にはレーザーを。しばらく当てると穴がふさぎ、元通りになるが、あまり当てすぎるとオーバーヒートして辺りに煤が付着してしまう。
と、基本的にはこういったことをして、部屋を掃除していくことになる。…わけだが、しかし、こうして列挙されても「何が楽しいのか」「ただ掃除するだけのどこがゲームなのか」と、思われる方は居るに違いない。実は筆者も当初そう思っていたので、その気持ちはわからないわけではない。しかし、考えてみてほしい。
そこにあった邪魔な物を無くしていく掃除。そしてそれら一連の工程を、できる限り効率よく進めていくためにはどうすればいいか、ということを考えながらする作業。邪魔の入らない環境で一人黙々と行うことのできる、それらの仕事。
例えば、本棚の整理を楽しめる人や、ゲームの実績をコツコツ埋める作業を動機にゲームができる人などには、なんとなくこの作品をしているときの感覚というものが「あぁ、ああいう感じ?」とわかっていただけるのではないだろうか。そう、つまり「地味ではあるけれど、それが逆に良いんだ」という感覚がわかる人にはたまらない作業、ゲームということだ。
ここまでの言葉による説明でも楽しそうだと思えない方はぜひ、だまされたと思って公式サイトから体験版をやってみてほしい。あれ?いつのまにか無心でやっていた…と、なるはずだ。
本作は現時点で未だ"早期アクセス"の状態だが、それでもマップは10種類以上あり、現状でも値段以上には楽しめると思う。ワークショップにも対応しているため、いくらでも掃除ができる、ということも考えればなおさらだ。また、本作はマルチプレイヤーにも対応している。そのため、フレンドと騒ぎながらの掃除も可能になっている、という点も特筆すべき点だろう。
ただ掃除するだけであっても、暇つぶし以上に楽しめる『Viscera Cleanup Detail』シンプルであり、しかしそれゆえ、他に代わりの存在しない本作をプレイし、新たなゲームジャンルを開拓してみてはいかがだろうか。