『RiME』はトゥーン調の美麗なグラフィックが特徴的な、アクションアドベンチャーゲーム。
とある島へ打ち上げられた少年が、塔の頂上を目指すという物語だ。
操作としては「ジャンプ」と仕掛けを作動させるための「叫び」「物をつかむ」の3つのみ。加えて、邪魔をする敵は出てきても所詮仕掛けの一環であり、高いところから落ちようが、水中で窒息しようがすぐ近くの場所からすぐに再開されるという仕様で、ゲームオーバーも無い。このことから、アクションゲームとはいっても、難易度はあって無いようなゲーム性になっている。
美しい世界に浸りながらゆったりと、謎めいた物語に想像を膨らませる絵本のような作品、それがこの『RiME』だ。
本作のステージはチャプターで区切られている形なのだが、そのマップはかなり広い。単に道なりへ進むだけの場面でも見渡せば横道が見つかり、道草を食ってくださいといわんばかりの構成になっている。水にも潜れば底が深く続いていたり、怪しげな物影を見れば実は下に行けたりと、実に探索しがいがある。
一方で、正規ルートに当たる道が分かりづらい面もある。直接的なヒントも無いため、入り組んだ地形では迷ってしまうことも珍しくない。とはいえ、のんびり歩いたところで急かされることはなく、ゲーム的にはいくら時間をかけても問題はない。その上、ハズレに当たる道の先には大抵収集物が用意されており、横道としてのゴールは存在しているため、無駄骨になる心配も無用。
もしも、あなたが景色を楽しみながら、散歩気分でプレイすることに楽しみを覚えるタイプであれば、これは欠点ではなくむしろおすすめできる特徴と言えるだろう。
冒頭にも記したとおり本作で使えるアクションは簡素なものだ。よって、それを使って攻略するパズルもまた簡単な難易度になる。大抵は箱を押したり、光る石を置いたりという具合にギミックを作動させる程度で、パズル色はそう強くない。
ではこれが退屈かといえば、意外とそうは感じないのである。その理由は、解いた際の演出を見てみればわかるだろう。
音楽やエフェクトによる演出が「よくできました」に当たる景品として機能し、「おぉっ!」と感嘆できるものであることで、たとえ問題が至極単純だったとしてもテンションは上がり、楽しいと感じることができる。
なので、問題の難易度なんて気にもならない。本作にとってのパズルとはメインに据えたものではなく、あくまで演出の一環であるだけなのだ。
プレイヤーにとってこのラクさは、途中で詰まったり、盛り上がった気分に水を差されたりすることを防ぎ、没入感も高めてくれる。
主人公が海岸で倒れているという場面から始まる本作は、言葉を用いた説明が一切無い。誰かと話すこともなければ、看板のような文字媒体も無く、当然、ナレーターのような第三者が解説することもない。
よって、過去に何が起きたのか、あるいは現在何が起きているのかは全てプレイヤーの想像にゆだねられることになる。
この一切説明を行わない作りは、世界全体に意味深で神秘的な雰囲気を纏わせ、冒険に特別さを加えるスパイスとして好奇心を掻き立ててくれる。
機械的な見た目のギミック、黒い人型の何か、先導してくれる狐など、そこかしこから漂うぼやけた情報が自然と足を進ませ、考察を促してくれれば、あんなにも広いと感じた世界でも隅々まで見て回りたくなるのだ。
……ちなみに、メニュー画面では日本語が完備されており、きちんと文字で表記してくれているので安心してほしい。
この世界は美しく、しかしどこか寂しさのようなものがある。色彩豊かと思えば、モノクロ調の薄暗いチャプターもあり、移り変わる様相に飽きることは無い。
しかし、そのボリュームはというと6時間程度で、物足りなさを感じる人も多い。また、アクションやパズルの面では簡単すぎるということが欠点として上げらていることも少なくない。
何が言いたいかというと、実は本作は人を選ぶ” 雰囲気ゲー ”である、ということだ。
ここまで記してきた様々な点は全て、見方を変えると欠点になりえてしまうだろう。本作はそんなバランスの上に仕上がっているゲームなのである。
ただそれでも、その絶妙な塩梅で彩られる雰囲気というものが特別で、かつ誰にも邪魔されず冒険できる作品はそう多くないはずであり、その点において本作は間違いなく特定の需要を満たせるゲームだと断言することもできるのだ。そんな、言葉では語りつくせない部分にこそ魅力が詰まっている本作、ぜひともプレイしてみてはいかがだろう。