『Heart of Crown』(以下『HoC』)は2~4人用向けの「デッキ成長型」カードゲーム。元は2011年に発売された同人作品で、後に拡張パックの追加、PC版の発売とその規模を拡大。Steamにリリースしたという経緯を持つ作品だよ。
じゃあ、『HoC』ってなにがおもしろいの?ってお話を始める前に、まずはゲームルールから説明していこうかな。正確に魅力を伝えるためには、まずその内容を理解してもらう必要があるしね!あ、ちなみに、これから説明していくことは公式のルールブック(pdf)と大差ないから、より詳しく知りたくなったらそっちを見たほうがいいよ。かなりざっくりいくからね。むしろ、ゲーム内でもチュートリアルはあるから、一旦読み飛ばしてもいいまであるかな。
このゲームを一言で表現するなら、”お金を稼いでカードを購入するってことを繰り返す”、になるよ。便利なカードを手に入れてデッキを肥やし、勝利を目指すんだ。使ったカードは捨て札になるんだけど、デッキが無くなり次第、その捨て札をシャッフルして再びデッキとして使うことになる。そうすると、カードは無くならないからデッキはどんどん厚みを増していくよね。これが「デッキ成長型」と言われる理由だよ。で、肝心の勝利条件だけど、”勝利点”っていうものを誰よりも早く20点手に入れること。その過程では必ず「プリンセス」カードを購入する必要があって、これが本作の目玉要素になっているんだ。
さて、下の画像がゲーム画面にいろいろと書き記したもの。本作の”場”にあたるよ。対戦中はこの画面で遊んでいくから、覚えないといけないことはここに映っていることでほとんどになるね!
たくさんのカードが並んでいるけれど、書いている内容から大体は伝わるかな。 とりあえずここでは、左上のごちゃごちゃしてる「マーケット」だけ補足説明しておくね。「マーケット」は文字通り、購入するカードがある場所。表向きのカードが商品にあたるよ。カードの下に見える数字が値段で「コスト」って言われるけど、買った後に使うときはお金をもう一度払う必要は無いからね。 このゲームには46種類のカードが用意されているんだけど、1ゲームで使うのは選ばれし10種類+αのカードだけ。ゲーム開始前にプレイヤーが、自由に抜粋したカードを「ランダムマーケット」のカードとして使うんだ。
ここに並ぶカードたちはまず、1つの山札としてぐちゃぐちゃにまとめられ、裏向きに置かれる。そして、その山札からカードをめくって、種類ごとに表向きに並べていくんだ。ソリティアの要領でね。これを繰り返して常に8種類のカードが準備されている場所が「ランダムマーケット」になるよ。
で、隣の「ベーシックマーケット」は、そんな10種類のカードとは別に、ルール上必ずゲームに組み込まれる”ベーシックカード”たちが並ぶよ。”+α”にあたる部分だね。具体的には「領地」×2、「継承権」×3の5種類。「呪い」カード置き場もここにあるんだけど、これだけは購入対象じゃないから別枠扱いになっているよ。その右の「プリンセス」も同じカテゴリだと思ってOK。こっちも必ずゲームに組み込まれるからさ。
と、まあこんな風にいっぱいカードは並んでいるけれど、実際には単純な構成がされている「マーケット」。表示こそ小さいけれど、ポインタを重ねれば拡大表示してくれるから、わからないカードがあっても安心だよ。
本作で使われるカードは様々な分類がされているんだ。中でも”メインタイプ”って名前で大別されているのが7種類ある。次はそれについて。
これ以外にも”サブタイプ”っていう名称で「魔法」や「兵力」なんてカテゴリもあるね。このタイプのカードには効果に深く関わってくるものがあるから、実はかなり重要だったりする。どのタイプのカードがゲームに選ばれているかは、そういう一部のカードの価値を大きく左右する可能性があるから注意しなきゃいけないんだ。ランダムマーケットの駆け引きはこんな形でも作られるわけだね。
続いて、1ターンの流れ。順に、
っていう流れで進行していくよ。それぞれ詳しく見ていこう。
このフェイズは手札からカードを使うタイミングになるよ。ただし、1枚だけね。え、少ない?でも、大丈夫。この時、使ったカードに”リンクシンボル”があれば、その数だけ追加でカードを使えるんだ。チェインコンボみたいな感じかな。
このフェイズはお買い物タイム。「マーケット」のシステムはさっき書いたとおりだけど、購入したカードは一度捨て札へ行く、って説明はまだしてなかったよね。使えるようになるのは次のデッキシャッフル以降になるから、ちょっとだけタイムラグがあるんだ。未来を見据えた、投資みたいな買い方をしないといけないね。 そしてここではもう1つ、とても大切なことも行える。それが「継承権カードのセット」。このゲームの勝利条件が「継承点の獲得」にあることは説明したけれど、その継承点は「継承権」カードを専用の場所へ移して初めて点になる。そのタイミングがここなわけだね。ただ、この継承点カードのセットは、カードの購入とどっちかしかできないことは要注意。買い物と継承点、どっちを選ぶか。レースゲーム的駆け引きにデッドヒートを起こす大きな要因だよ。
このフェイズは、ターンの後処理みたいなものかな。残った手札とコインが全部捨てられちゃうからね。全ては1ターンできれいに無くなるから、うまく使い切るようにしたいところ。あ、このクリンナップフェイズと次の段階の手札補充フェイズ、マーケット補充フェイズは、ゲームが全部勝手に処理をしてくれるよ。プレイヤーはメイン、セカンドフェイズだけ操作すればいいから、意識するほどのフェイズではないかもね。
ターンの終わりになるこのタイミングで、手札の補充が”5枚”行われる。 この補充だけど、ターンの最初じゃなくて、最後に行われるってのはすごく重要だよ。他のプレイヤーのターンで攻撃カードを使われて手札が飛ばされると、次のターンは少ない手札で始まっちゃうからね。
ランダムマーケットに用意されていたカードのどれかが無くなっている場合、ここで新たなカードが補充されるよ。ゲーム開始時と同じように、マーケット中央の裏向き山札から、ソリティア方式でね。
……と、こんな感じで、1ターンを参加者が順番にやっていくことになるよ。とはいえ、文字だけじゃよくわからないよね、ってことでこの一連の流れをwebmで用意したよ!
うん、超短いね。でも1ターンなんてこんなもんだよ。なにせ操作するのはメインとセカンドフェイズだけだしさ。1戦まるまるの動画は記事の最後に載せてあるので、よかったらそっちもチェックしてみてくださいな。余談だけどこのゲーム、2~4人用と言いながら、1人でプレイすることもできるよ!
さて、そんなこんなで長くなっちゃったけれど、ここから本番。「『HoC』ってどこがおもしろいの?」について。本作の魅力、他に無い個性はなんだろうって考えると、やっぱり「プリンセス」の存在かなって思うんだ。
本作って実は「ドミニオン」っていうカードゲームを下地にした、いわゆる「ドミニオンクローン」なんだよね。「ドミニオン」についてここでは詳しく説明しないけど、一言で言うなら「すごくよくできていて超おもしろいで賞」をいっぱい獲得したすごいゲームだよ。そのおもしろさは、本作以外にもたくさんの「ドミニオンクローン」を生みだしたほどに偉大なものだったんだね。でも本作の「プリンセス」はこの『HoC』独自のプラス要素なわけ。
このたった1つのシステムは、ゲームに折り返し地点を生み出した。すると、その前半と後半でカードの役割に変化が生まれたんだ。なにせ、継承点は後半からしか生きないのに、購入と二者択一。コインを入手する手段を積み過ぎちゃうと後半で腐りかねない。たくさんの効果カードだって同じことが言えるだろうね。
じゃあ、どういうデッキメイクをするかって話なんだけど、このバランスが難しい。だから、いつから勝負をかけるかの緩急が自然とプレイヤーごとにばらつく。早い者勝ちという要素が、勝負を水面下で静かに、だけど確かに白熱させるんだ。デッキ成長型ゲームって、一見すると一人ソリティアになりかねないんだけど、こんな風にプリンセスの存在がうまく作用しているわけだね。このゲームってさ、うまい人とやるといつの間にか勝敗がついてるんだ。そんな時こそ、ほんとよくできてるなあって感じるよ。
ルールが手軽なのもすごく良いよね。反省点を見つけやすいから、毎ゲーム何かしら新しい発見があって成長を実感できるんだ。例えば「攻撃を受けすぎたら何もできないのか」とか「あのカードは長期的に見るとそんなに便利だったのか」とかね。こういうのって意外と誰かに使われて初めてわかったりする。一度考え出したらたくさんのものが見えてくるゲーム性は、リプレイしたくなる魅力になってるんじゃないかなって思うのね。
カードの数とその組み合わせパターンの膨大さも、飽きのこなさに繋がっていてさらに魅力を増しているよね。
本作はカードゲームだけど、感覚的にはTCG(トレーディングカードゲーム)とかと違って、トランプみたいなテーブルゲーム、ボードゲーム寄りなんだ。このゲーム性って、全てのプレイヤーが平等な状況から始まるという公平性が特徴的なわけだよね。本作だとさらに、運の要素は自分のデッキメイク次第、ってことが知識や経験による腕前を如実に表していて、わかりやすさと高い戦略性を見事に併せ持っている。この部分は、他のゲームではなかなか味わえないものに仕上がっているんじゃないかな、と感じたわけだね。
そんな『Heart of Crown』は、今までこの手のゲームに触れてこなかった私のような人にも、ドミニオンクローンを遊びつくした人にも安心してオススメできる作品になっていると思うんだ!