1%が当たり、99%が外れる経験は、誰しもあるに違いない。
確率とは憎たらしく理不尽なもので、いつだって信じるものがバカを見てきた。
しかし、このゲームで最も権力を持っているのは皮肉なことに ”運命の女神様” その人なのである。
『 Hand of Fate 』は、テーブルトーク風味で進行する、ローグライクアクションRPG。
ゲームマスターである怪しげな風貌の男と机をはさみ、雰囲気十分な中で世界が展開されていくという、なかなか珍しい作風のゲームだ。
本作はカードを用いて遊ぶ、という趣向になっており、ゲームの流れとしてはテーブルに置かれたカードを選択するところから始まる。
カードを選ぶと、そこに書かれた物語が読まれ、プレイヤーが行動を選択。
話の流れ次第で、成功か失敗かの判定を4枚のカードから行い、処理をすると1ターン
が終了。再びカードを選ぶ、というサイクルだ。
これを繰り返し、どこかにあるボスカードを探して戦闘を行って勝利すれば、ゲームクリアとなる。
本作の肝たるパーツ "カード" は、たくさんの種類が用意されている。そのほとんどは場に展開されるイベントカードだ。
イベントでは大抵 『こういうことが起きました。どうしますか?』 と問われ、プレイヤーはいくつかの選択肢から行動を選ぶことになる。
例えばこちら。宝箱を発見した、というイベント。
冒険にはお約束と言えるようなイベントだが、やはり例によって例のごとく、トラップが仕掛けてある。
だがここは臆することなく、あえて宝箱へ近づく選択をしてみよう。
すると、トラップが作動するかどうかという "運試し" が行われる。
4枚のカードを裏返してシャッフルし、その中から成功か失敗かを当てるというものだ。
今回は……うまく成功のカードを引き当てたため、トラップを作動させずに近づけた。
続いて、宝箱を開けられるか、という運試しへ。成功すれば中のお宝は手に入るかもしれないが……。
さてここで、冒頭にて述べた ”運命の女神様” という一文を思い出してほしい。
そう、本作は ”運” の要素がとても強いのだ。
大抵のイベントでは、この宝箱のように『成功失敗ロール』が求められ、その結果が冒険に大きく影響を与えてくる。
非常に理不尽に思えるかもしれない。嫌厭する人もいるだろう。
だが、運をいくらかカバーできる余地もきちんと用意されている。
一つは、デッキメイク機能。
場に展開されるほとんどのカードや、イベントの報酬としてその都度配られる装備などは、自分がデッキとして設定した山札から選ばれる。
よって、苦手なカードを抜き、便利なカードを入れるといった一工夫で、冒険における博打の可能性を減らすことができる。
もう一つは、プレイヤー自身の腕。
本作では、敵と戦うという展開の際、アクションパートへ移行する。
その内容は例えるなら、バットマンのアーカムシリーズに似たシステム。
入力した方向の相手へ自動的にロックオンし、ボタン連打だけで攻撃できるカジュアルな仕組みだ。
これにガードとドッジ、装備ごとの固有技を混ぜ、戦っていく。
うまく戦闘に勝利すればイベントはクリアとなり、報酬ももらえる。
つまり、どれだけ運の悪いロールが降りかかっていたとしても、乗り越えることができるわけだ。
こうして運と実力と小手先でめでたくイベントを切り抜ければ、 ”トークン” と呼ばれる報酬がもらえることがある。
トークンはゲームが終わった後、カードが手に入るカードパックのようなもので、大抵はそのイベントの続きのお話にあたるカードが入っている。
例えば 『白の議会Ⅰ』をクリアすれば『白の議会Ⅱ』が手に入り、このカードをデッキに入れると、次の機会に『白の議会Ⅱ』をプレイできる、という仕組みだ。
カードによるイベントは、基本的に数パートに分かれており、種類事態も豊富にある。
加え、選択肢は運で結果がぶれるためいつも思いがけない冒険を演出してくれ、冒険者としてのロールプレイが自然とできることだろう。
そして、没入感を高めてくれる独特な雰囲気が、たとえどこかで不運が降りかかろうと 「そういう運命なのだろう」 と、ストレスなく受け入れさせてくれる。
このように、全てに付随してくる運の要素は、ネガティブなイメージをうまく消した上で 「なにが起こってもおかしくない」 という世界観を演出する舞台装置として、非常にうまく組み込まれているのだ。
不思議な世界観と、シンプルながら独特でリプレイ性の高い 『 Hand of Fate 』。
ローグライクで、TRPG(風味)で、アクションで、運ゲーでもある・・・こんなにも色々なジャンルが詰まった作品は、あまり無いのではないだろうか。
もしこの中でどれか一つでも、あなたの興味に引っかかるものがあるなら、ぜひ手にとってみてほしい。
きっとそれは ”成功” のカードであると、断言しよう。