「ルチャ・リブレ」……それは、メキシカンスタイルのプロレスを指す言葉。
派手なマスクと、投げ技、関節技が中心のスタイリッシュなファイトスタイルで、メキシコを中心に大変人気がある競技。
なぜこんなことから説明するかというと、本作の主人公がこのルチャ・リブレの選手「ルチャドール」だからだ。
『Guacamelee!』は探索型の2Dアクションゲームとなっており、自身を強化するスキルを手に入れ、探索の幅を広げていくということの繰り返しで進める、いわゆる”メトロイドヴァニア”タイプに分類されるゲームだ。
前述したように、主人公は「ルチャドール」であることため、肉弾戦を得意とするわけだが、その戦闘スタイルは、ちぎっては投げの徒手空拳と、2Dアクションというジャンルにぴったりの派手さを持ち合わせている。
ただ殴るだけ、とイメージすると、一見地味に思えるかもしれないが、多種多様なパターンから繰り出す吹き飛ばし技や、そこからの追撃を絡めたコンボの応酬は実に爽快。
しかもそれらは"ボタン+方向"の入力で出せ、とても手軽に暴れることができるため「壁にぶつけた敵を空中で拾い、打ち上げ、とどめに投げ技で周囲の敵ごと吹き飛ばす」なんてことも難しくない。
こうした、2Dアクションだからこそできる、画面全体を把握しての戦闘は、飽きを感じさせないほど 忙しく、見た目にも楽しい。話を進めると覚える技や、お金を使って覚える技などのおかげで、最後まで新鮮さを感じながら戦闘ができることも、特筆すべき点だろう。
またそれでいて、油断すると一気に劣勢になるバランスなのも良い。
敵はこちらが使えない遠距離攻撃を普通に使ってくるし、なにより、数で押されるのはどんなゲームの例にも漏れず恐ろしいものだ。中には、なかなかひるんでくれない巨大な敵も居たりして、主人公の圧倒的な強さに引けを取らないほど、敵のほうも手ごわい。爽快にアクションができるとは言ったものの、一筋縄ではいかないわけだが、この丁度良い塩梅のおかげで、最初から最後まで歯ごたえのある戦いができるだろう。
そして忘れてはいけないポイント。BGMやグラフィックなどからなる演出面も評価が高い。
まずグラフィックだが、スクリーンショットを見ればわかるとおり、明暗のはっきりした色使いで構成されている。終始こういったカラフルな色彩で描かれている世界は、激しい動きを要求してくるゲーム性と相性が良く、見づらくてどうなっているか把握しにくいといったことが無い。もちろん、雰囲気という面で見ても最高にマッチしている。
最初のうちは奇妙に見える半裸の主人公が、進めていくうちにかっこよく見えていき、むしろこれ以外ないだろうとさえ思えるようになってくる。それは、これら全体的なデザインがよく練られ、まとまっているからに他ならない。BGMも良い出来…とはいえ、こればかりは言葉では説明しにくい部分なので、気に入ったらサントラも購入できる、ということだけ付け加えておこう。
今や、あらゆるものがあふれる2Dアクションゲーム界において、それでも高評価を得た『Guacamelee!』。
はっきり言って『Guacamelee!』には、"このゲームにしか無い"といった要素があるわけではない。
それでも、これだけおもしろいと思えるのは偏に、プレイしていて楽しいと感じる要素が、完璧に詰め込まれているからこそだろう。2Dアクションに求められる部分をしっかり盛り込んだうえで、それをうまく料理し、きれいに仕上げているわけだ。
欠点らしい欠点といえば、10時間にも満たない時間で終わってしまうそのボリュームだが、難易度もいくつか用意されているし、実績埋め、特定の制限プレイなど、楽しみ方はどうとでもなるはず。そもそも、その欠点込みでも満足できるほどの内容であるため、気にすることではないだろう。もしも、あなたが2Dアクションに飢えているというならば、本作は自信を持っておすすめできる一品だ。
さあ、あなたも今こそ、マスクを被ってルチャドールとなり『Guacamelee!』というリングに上がって、敵を投げ飛ばしてみてはいかがだろうか。