怖くとも、歩かなくちゃならない夜の町『Yomawari: Night Alone』

ゲームタイトル:
開発元:
パブリッシャー:
定価:
1,980円
DLC:
200円(アートブック)
100円(OST)
HayanieMozu 筆者:HayanieMozu Steam プロフィール
Yomawari: Night Alone

幼い頃は今以上に夜が怖いものだった。学校や通学路といった馴染みの風景が影と闇とに溶け込んで、何かが現れて私をさらうか襲うかしてくるのではないか、という気持ちにさせられた。今回取り上げる『YOMAWARI: Night Alone』は、そういった恐怖を軸にしたホラーテイストのアドベンチャーだ。なお、本作は2015年にPlayStation Vita向けにリリースされた『夜廻』の移植版で、日本語字幕も収録されている(以下では『夜廻』と表記を統一する)。

主人公は幼い女の子だ。冒頭部で行方のわからなくってしまう姉、そして愛犬ポロを探すため、夜の町を健気に歩き回る。町に人影はなく、なり代わったかのように怪異が溢れかえっている。怪異は人の姿を借りるものもあれば、異形としか言いようのないものもあるが、どちらにしても近づくことすら憚られる存在だ。

Yomawari: Night Alone 化け物に触れてしまうと即座にゲームオーバーとなる
Yomawari: Night Alone 自宅の近くはどこか昭和を感じさせる町並みで味わい深い

か弱い主人公に化け物を倒すような力はなく、化け物を避けながら姉とポロにつながる手がかりを探すというのが基本的なゲームプレイとなっている。なかには対処法のある化け物もいて視線を合わせる、アイテムを投げるといった方法が有効なこともあるが、触れないように逃げるのが基本となる。ダッシュも使える。ただし、化け物の近くではすぐに息切れしてしまうのでコツをつかむまでなかなか使用が難しい。

Yomawari: Night Alone 看板の陰や草むらに隠れてやりすごすといった方法も有効
Yomawari: Night Alone 対処法を見つけ出す覚えゲーの側面もかなり強い

ゲーム進行は昔ながらのアドベンチャーといった手触りで、探索を通じてキーアイテムを見つけ、状況を打開したらさらに探索を続けるといったものだ。

Yomawari: Night Alone 少女の手書きを想起させるフォントやメニュー周りなども凝っていてよい

ここで老婆心ながらひとつだけアドバイスをしておこう。本作は逃げることが重要なゲームでありながらキーアイテムを拾ったり、先へと進んだりするのに多数の敵を突っ切るようなシーンが結構ある。主人公は非力な少女だが、姉やポロのため、勇気を出して進まなければならないのだ。私は当初、これに気づけなかったせいで一度プレイを投げ出してしまった。もしも「詰まったかな」と思ったときはこのことを思い出してほしい。

『夜廻』では自宅の近所以外にも峠、田んぼ、トンネル、墓地、工場などホラーで定番となっているロケーションが多数登場する。学校もあり、教室や音楽室といった個別の部屋に入らないのがやや残念だが、それを除けば手堅いラインアップと言えるだろう。楽曲ではなく環境音をメインにした音作り、イラスト調のグラフィックや光の扱いなど、ホラーを演出する要素は揃っている。ビックリ演出が少なめなのも個人的に好印象だった。

この雰囲気に惹かれるかどうか、そして逃げが主体で即死するという覚えゲーの側面をクリアできるかどうかが(ゲームオーバーになってもキーアイテムの獲得状況などはそのままなのがせめてもの救いだ)、本作を気に入るかどうかのボーダーラインとなるだろう。いくつかスクリーンショットをまとめて貼っておくので参考にしてほしい。

Yomawari: Night Alone
Yomawari: Night Alone
Yomawari: Night Alone
Yomawari: Night Alone

各ロケーションはシームレスにつながっていてそこそこの広さがある。しかし、ストーリーの進行に応じて行ける場所が広がっていく方式なので、最初から極端に迷うようなことはない。また、各所に点在する地蔵から、訪れたことのある別の地蔵へと一瞬でジャンプができる。このため、広さの割に不便を感じることは少ない。

Yomawari: Night Alone お地蔵さんに10円玉をお供えするとセーブができる

肝心のストーリーに関しては、あまり深いテーマを感じさせるものではなかった。一方ですべてが語られず、さまざまな謎を残したまま終わってしまうので、考察が好きな人には向いているかもしれない。

プレイ時間はクリアだけなら5、6時間といったところだろう。一夜でプレイするには集中力との兼ね合いもあって少々長いが、週末に一気にプレイするのは向いていると思う。1時間程度の章にわかれているので各章を一夜ずつプレイしていくのもいいかもしれない。童心を思い出しつつ、怪異の蠢く町を訪れてみてはいかがだろうか。

Yomawari: Night Alone 収集物もあるので、コレクションするのが好きな人はもう少しプレイ時間が伸びるだろう

なお、本作は公式にノベライズが行われ、同名の小説『夜廻』がリリースされている。ゲームに沿った内容だが、主人公の視点に加え、プレイアブルではなかった姉との視点とが描かれているのが大きな特徴だ。姉の身に起こっていたことや彼女らの家庭的背景などゲームではわからなかった事実も語られているので、『夜廻』の物語をより深く楽しむなら強くオススメしたい。個人的には両方楽しむならゲーム版『夜廻』が先のほうがよいと思う。

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