ニューヨーク、ボストン、シカゴにロサンゼルス(ロスサントス)。どれも最近のゲームで舞台となったアメリカの都市だ。今秋にはさらにニューオリンズ(ニューボルドー)も控えており、ゲームファンが「いずれはアメリカ全土を舞台とするゲームも出るのではないか」と期待に胸膨らませるのも無理はないだろう。
さて今回は、そのような期待にいち早く応え(?)、アメリカ合衆国全土(アラスカやハワイなど一部を除く)を舞台にしたレーシングゲーム『The Crew』を紹介する。
チュートリアルを兼ねたストーリー冒頭部が終わると、プレイヤーはデトロイトに放り出される。しかし、そこから先は基本的に自由。ストーリーを無視して手近なナイアガラの滝を目指してもいいし、アメリカ横断に匹敵するほど離れたロサンゼルスへとかっ飛ばしてもいい。マップ上で行きたい場所にウェイポイントを設定すれば、目的地までの道筋がナビゲートされるので方向音痴だって心配なし。しかもこのナビは、道を間違えたり、別の場所に寄り道したりしても即座に新しい道筋を提示してくれる優れものなのだ。
もちろんストーリーミッションを進めて、BUCKS(お金)を稼ぎつつ地道に行動範囲を広げていくのもいいだろう。BUCKSが貯まれば新たな車を買うことだってできる。
システム面も手堅くまとまっており、一度行ったことのある場所ならマップから一瞬で移動できるファストトラベル、路上を外れても安心のコース復帰、ゲージ使用で加速するニトロ、パーツやビジュアルを含めたカスタム要素と、お馴染みの要素は一通り揃っている。運転の感触も含め、全体的にカジュアルな仕上がりで、ストイックなイメージからレーシングゲームを敬遠していた人にこそ、ぜひオススメしたい。
『The Crew』の持つ広大なロケーションと堅実なシステム、そしてカジュアルな手触りによって浮き彫りとなるのがドライブする喜びだ。小難しいことを考えずに好き勝手走るのはやはり楽しい。行ったことはなくとも一度は耳にしたことのあるような観光スポットを目にする驚き、だだっ広い道を高速で飛ばす爽快感などは素晴らしく、レースゲームであることを忘れ、車で旅行しているかのような感覚に陥ることもしばしばある。
これはアップデートによって以下のような変更が加わり、本作のドライブ体験が大きく底上げされたという点が大きい。
・グラフィックの向上
・全土に適用される天候の変化(以前は、一部の場所が固定の天候だった)
・スクリーンショットを撮影するためのフォトモード
目を見張るのは、天候変化とフォトモードだ。
天候変化はすべての景色に新たな表情を与え、見た目だけでなく路面状況による走りの変化をももたらした。昼夜の変化もあるため、時間帯によって景色が一変するのも味わい深い。
フォトモードは焦点や傾きといったカメラ設定をいじれるほか、エフェクトをかけたり、ロゴやフレームを追加したりできる。フォトモード中は時間帯や天候すらも変えることが可能で、晴天の朝焼けだろうと雨の降りしきる夜だろうと、いともたやすく撮影できる。
そしてこの(自分の求めるカッコいい)スクリーンショット撮影がとんでもなく楽しい。行く先々でフォトモードを起動しては設定をいじり、車を移動させては「ああでもないこうでもない」と悩んでしまう魔力がある。
なお、本作では最大4人のパーティー(「Crew」と呼ぶ)を組むことができ、同じサーバ(マップ)上でプレイが可能だ。4人というのがいささか少ない気はするが、みんなでワイワイとドライブ旅行するのは言うまでもなく楽しいし、フォトモードで撮影したスクリーンショットをSteam上のアクティビティで共有すれば、あっという間に思い出のアルバムが完成だ。各々の凝り方や癖が見えてくるのもおもしろい。
というわけでぜひともフレンドと一緒に旅行計画を立ててみてほしい。「○○まで行ってみよう」程度の雑な計画でOKだ。幸いにも『The Crew』には、走り尽くすにはあまりに大きいフィールドが広がっており、寄り道はいくらでもできる。
広大なアメリカの大地を時間に囚われず走るとき、つかの間、プレイヤーは自分勝手になり、自由になる。どこを走ってもいいし、どこまで走ってもいいという孤高の行為。その先にはいくつもの表情を見せる景色たちが並び、それらを余すことなく写真に収めるフォトモードがその手にある。愛車を止めていそいそと撮影を始める行為は癒やしにも等しく、マルチプレイならその楽しさはさらに跳ね上がるだろう。
『The Crew』こそ、最高のドライブ体験を突き詰めた孤高のドライビングゲームなのだ。