今回は、全国的な暖冬とは対照的なタイトル、『Sang-Froid - Tales of Werewolves』を紹介したい。本作は厳しい寒さの訪れるカナダの山あいを舞台にしたストラテジー色の強いアクションゲーム。主人公は人里離れた山奥に住む木こりのO'Carroll兄弟で、夜な夜な彼らの家を襲う人狼、狼、そしてウィル・オ・ウィスプのような精霊・悪霊の類を撃退しながら、およそ1ヶ月間を戦い抜く。
本作はローカライズされていないのが難点だが、ストーリーを差し置けば動画つきのチュートリアルがあるため、プレイ自体はかなりわかりやすい。
ジャンルとしては三人称視点のアクションゲームにあたる。タワーディフェンスのようにいくつかのウェーブに分かれて襲撃してくる人狼を倒し、無事朝を迎えればステージクリアだ。逆に人狼の攻撃によって家や水車小屋といったJosの資産のいずれかを壊されてしまえばその時点でゲームオーバーとなる。人狼の襲撃は夜間のみだが、時間経過で朝になることはなく、敵をすべて片付けないかぎりクリアとはならない。
主人公のJosがいくら腕力に優れる木こりと言っても所詮は1人の人間。攻撃やダッシュはスタミナを消費し、スタミナが切れるとほとんどの動作が鈍化してしまう。そんなJosが、強靭で数でも勝る人狼たちとまともに渡り合うのは困難を極める。そこでJosには「罠」という強力な対抗手段が用意されている。
罠は10種類程で、上を歩くと即座にダメージを与えるトラバサミやスパイク、腹を空かせた人狼たちを一時的に足止めする寄せ餌、進行ルートを阻害する火の壁などが使える。いずれの罠も昼のうちにマップ上に設置して使うものだ。ただし、敵によって有効な罠が異なるのに加え、特定の罠を無効化する敵もいるため、敵に合わせた罠を設置していかないと夜間の襲撃時に苦戦を強いられることになる。
Josは人狼を誘い出す手段をいくつか持っており、この陽動が本作のゲームプレイをユニークなものにしている。例えば初期から使えるものとして、雄叫びのスキルがある。本来、敵は目的地への最短ルートを移動するのだが、雄叫びが聞こえるやいなや、効果範囲内の敵が音に釣られて集まってくるのだ。また、銃声にも同様の効果がある。
さらに敵は強力な嗅覚を持っており、Josが風上にいるとその匂いに気づいて集まってくる。匂いを消すことはできないので予想外の敵を集めてしまうリスクを伴うが、こちらの移動ルートを工夫すれば逆に敵を誘い出すことにも使える。
そして陽動の本領は罠への誘導だ。特に銃撃によって起動する樽製爆弾や落石網のような罠は総じて威力が高く、敵を一網打尽にする大きなチャンスとなる。反面、これらの手動起動の罠は操作タイミングによって効果が大きく増減してしまう一面も持つので、最大の効果を引き出せるよう、その一瞬を狙っていこう。
このように本作はアクション要素を持ったタワーディフェンスライクな防衛ゲームだが、このほかにも多彩な要素が盛り込まれている。
ひとつはスキルや罠のアンロックだ。これはステージクリア時に入手できる経験値を貯めてレベルアップすると可能で、Josを強化したり、罠の強化や特殊効果の付与ができる。
また、装備やアイテムを購入することもJosの強化につながる。新たな斧や銃を購入することで攻撃力を高められるほか、移動速度やスタミナ強化といった能力の底上げをできるアクセサリ類、消費アイテムや弾丸(弾丸は貴重なリソースであり、わざわざ購入しなければいけない)などが売買可能だ。なお、実は罠の設置にもお金がかかるため、本作では資金管理も非常に重要となる。
そして罠の設置にはお金のほか、アクションポイントと呼ばれる作業時間にあたるコストもかかる。アクションポイントはステージ間での持ち越しができない代わりに、残したアクションポイントをJosの本業である木の伐採に充てれば資金を増やせる。罠の設置を最低限に留めればその分、装備やアイテム類の購入に資金を充てられるというわけだ。
ほかにも恐怖心のコントロールや、マップ内の素早い移動を可能にするリフトの設置など、いくつもの要素がつめ込まれ、それらが巧みに絡み合っているのが本作の大きな美点。カナダの開発ということも手伝ってかカナダの民族音楽を思わせる楽曲群もゲームのテイストによく合っており、プレイを大いに盛り上げてくれる。
『Sang-Froid - Tales of Werewolves』はグラフィックやモーション、カットシーンといった見栄えに関する部分は少々魅力にかけるきらいがあるが、攻略や工夫のし甲斐のある奥深いゲームだ。その出来は『Orcs Must Die!』や『影牢』といった類似の先行作にも比肩するもので、見た目だけで尻込みせずに、ぜひプレイしてこの冬を熱いものにしてほしい。