今回紹介する『Lemma』は、『Minecraft』のようなボクセルで描かれた世界を『Mirror's Edge』シリーズのようなパルクール(道具を使わない移動術)で走って、跳んでゴールを目指す一人称視点のアクションゲームだ。
動画で見たほうが早いと思うので、次の短い動画を見てほしい。
ジャンプして縁に掴まるキャットリープ、壁を走るウォールランといったパルクールを駆使して、ステージ上を移動しているのがわかるだろう。これだけだとシンプルなパルクールアクションといった印象なのだが、ゲームを進めると少し要素が加わって本作は少し違う表情を見せるようになる。
次の動画を見てほしい。先の動画では無理矢理突破したが、こちらは同じ場所を本来の方法でプレイしている。
青いブロックが作られて、より簡単に移動できているのがわかるだろう。ゲームが進むと、このようにブロックを生成する不思議な力を手に入れられる。
紹介するにしても一文、味つけとしてもアクセント程度と思われそうなこのブロック生成システム。しかし、これがあるだけで移動できる範囲がグッと広がり、「あそこまで移動できそう」と思わせる場所が一気に増える。床ブロックはスライディングやローリングをしたとき、壁ブロックはウォールランをしたときのみ自動生成されるため、工夫のしがいがちゃんとあるのが心憎い。
結果、パルクールのスピード感を削がずに無理のない範囲で拡張し、爽快感がありながらも想像力を働かせられるプレイ感を実現している。リトライのテンポもよく、やり直しのイライラがないのも好印象だ。
操作もキレイにまとめられている。私はXbox 360 コントローラーでプレイしたが、キャラクター移動と視点移動を行う左右のスティックから指が離れないよう、ジャンプは右トリガーに配慮されており、パッド操作でも不自由を感じる場面はなかった。
ウォールランや壁の縁につかまってよじ登るときは、パルクール用として割り当てられた左トリガーを使用する。おもしろいのはこの左トリガーがスロー機能を兼ねていることだ。ジャンプして壁の縁につかまるその瞬間、左トリガーを引くことでゲームにスローがかかる。これが縁につかまる瞬間の緊張を増す演出として作用しているのだ。
ストーリーはというと失踪した友人を追って謎の世界を訪れるというもので、その設定も相まって非現実的な巨大建築、幻想的なロケーションがとても多い。アンビエントなサウンドに、雨や雷といった環境音もあり、雰囲気作りは十分。ロケーションも豊富でボリュームは6時間程度といったところだ。
ただし、ゲームが進むにつれて探索の要素が色濃くなっていく点は注意が必要だろう。
アクションゲームというよりパズルゲームのようなプレイを求められる場面が徐々に増えていき、行くべき場所がわからず迷ってしまうことも多々ある。このあたりは好き嫌いがわかれるところなので、それをやりごたえとして捉えられるプレイヤーにこそオススメしたい。
『Lemma』はいまやゲームではお馴染みの要素となりつつあるパルクールに、ブロック生成というスパイスを効かせたアクションゲームだ。ブロック生成は魔法めいた力ながら幻想的な世界観が手伝って不自然さはなく、うまく既存のパルクールに馴染んでいる。後半になると頭をもたげてくる探索とパズル要素の強さは好みがわかれる一方、美しい風景を駆け、跳びまわる楽しさはやはり格別だ。シンプルでいて爽快、やりごたえのあるパルクールアクションとしてオススメの一作と言えよう。