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2014/03/28ゲームはサッカーを超えるスポーツ競技になる!?考え方が180度変わるドキュメンタリーFREE TO PLAY
Steamからリリースされた「Free to Play」というドキュメンタリー映画が今年2014年3月20日に公開された。2011年に開催された国際的なゲームトーナメント、「インターナショナル」に集うゲーマー達を描いた異色のドキュメンタリーである。「インターナショナル」は、簡単に言えばSteamのDota2というゲームを5人のチームで相手チームと戦い、勝ち抜いて行くトーナメント方式のゲームイベント。
ゲーマーというと趣味の程度でやるものというイメージが個人的にあるが、ここに登場するゲーマーたちはプロだ。プロのスポーツ選手のように自分たちの”競技”に誇りを持ち、技術を高めるために日々練習を積み重ねている。そしてその”競技”で、生計をたてている。プロのサッカーや野球と何ら変わりないのだ。ただ、"スポーツとして完全に認知されていない”という点を除いて。
PCゲームを知らなくても楽しめる
物語はトーナメントやゲームの内容というよりも、ゲーマーの私生活や考え方の方に焦点をあてている。「Dotaを初めてプレイしたあの日、僕は初めて大人になった」とか「PCゲームは僕にとってのすべてだ」といったリアルな若者の熱い声を聞くことで、一気にストーリーに引き込まれて行く。普通のドキュメンタリーとして見れるので、PCゲームの知識がなくても十分楽しめる。というよりもPCゲームにあまりなじみのない人向けに作られていると言った方が正しいかもしれない。
賞金総額は過去最高の約1億6千万
似たようなゲームトーナメントはこれまでにいくつも開催されてきた。本トーナメントは何が違うのかというとその莫大な賞金にある。トーナメントの賞金総額はなんと160万USドル、日本円で約1億6千万ほどにもなるのだ。もはやドリームジャンボ並みである。さらに優勝者には、100万USドルの賞金が与えられるということで、eスポーツ界では大きな話題をよんだ。しかもそれほどまでに、ゲームが、スポーツのような地位として確立しつつているということを示すという意味でも、このトーナメントは大きな意味を持っている。
ゲームがスポーツになりつつある
eスポーツという、PCゲームをスポーツ競技の1種としてとらえる言葉もあるように、確かにゲームはスポーツの1競技として認知されつつあるようだ。映画の中でも何度かDota2をサッカーやバスケットボールに例える例があるのだが、確かに大会の様子を見ているとまるでオリンピックやワールドカップの試合を見ていた時のような感覚を呼び起こし、スポーツ観戦をしている状態に近いものがある。
実際、今回の「インターナショナル」では、5人で1チームを作り、チームで敵を倒すというチームプレイが要求される。チームで勝つにはチームで攻める、防御するなどの戦略をたてる必要があり、時には自分を犠牲にしてメンバーが勝ち進めるようにする必要もあるのだ。
それだけではない。チームで大会に向け日々の練習をしたり、サッカーさながらにチームにマネージャーがついているのだ。さらに大会の実況中継は、筋肉番付の古館氏のような実況で、観客も敵を倒したり、ゲームの状況が変わる度に、サッカーの試合でゴールを決めたような歓声がわくのだ。もはやワールドカップである。
厳しいプロゲーマーとしての職
プロゲーマーというのはどうやらゲームの大会で勝ち、その賞金で生計をたてている。トーナメントに勝って賞金をもらわなければ生計がたてられないのだから、映画に出てくるプロゲーマー達は、「失敗したらそれで終了」というように、本当に切羽詰まった様子だ。勝つことに執念を燃やす様子は、オリンピックで見てきたような選手達とどこか通じるものがある。しつこいようだが、本当にスポーツ観戦をしているような高揚感を覚えるのだ。
プロゲーマーの悩みはそれだけでない。ゲームを職とすることで、家族との関係がこじれることもある。ゲームで生計を立てるなんて信じられないという親もいれば、ゲームよりももっと勉強してほしいという親にゲームをやり続けることを説明するのは、簡単なことではない。ひどい場合だと、親に勘当されたり、学業よりもトーナメントを優先して留年してしまったりとプロゲーマーは、いろんなことを犠牲にした上で成り立っているのだ。
アジアではプロゲーマー達は大人気
日本ではオタクが市民権を得る前のように、eスポーツやプロゲーマーといった概念はまだまだ普及していない。しかし、中国や韓国といった他のアジア諸国ではまるで状況が違う。中国では、PCゲームの試合もテレビで放映され、女性が彼氏にプロゲーマーになって欲しいという女性もいるのだとか。ゲームのプレイ後には、ファンが集まってサインをもとめる。まるで歌手のような人気ぶりだ。中国ではeスポーツを1つの競技として、認めており、かなり力を注いでいるようだ。
一方で韓国ではワールドカップに出場する選手達がモチベーションを高めるために人気ゲーマー達を招待するなど、ワールドカップのサッカー選手からも尊敬されるのが、プロゲーマーなのだ。ちなみに今大会で優勝したチームの1人のツイッターのフォロワーは、ウクライナのサッカー代表チームよりも多いのだとか。
世界が一目置くアジアチーム
先ほども説明したようなアジア各国での人気ぶりを受けてか、アジアのチーム、特に中国チームは他の国のチームからは一目置かれている。大会で勝ちたいなら中国チームを呼ばないのが勝たないコツというプロゲーマーもいるほどだ。今回参加した中国チーム、「イーホーム」はチームとしては1番長くやっており、マネージャーも、「優勝以外は空港のゴミ箱行きだ」などといって何がなんでも勝つという思いが1番強いように感じられた。
ゲームになじみがない人にこそぜひ見てほしい作品
この映画は、ゲームがどうのというよりも、プロゲーマーとして、ゲームで生きていこう若者達のリアルを描いている。そんな若者達を通じてみる、eスポーツの未来は、非常に期待できるものである。このトーナメントをきっかけにeスポーツに対する意識が大きく変わると、映画でも繰り返し語られているように、本当にゲームがサッカーや野球のようなスポーツ競技の1つとなる日はそう遠くないだろうと感じさせられた。日本ではまだその流れも小さいようだが、eスポーツを専門にしたテレビ番組の放送開始など少しずつ流れは日本にも来ているようだ。今後の展開が楽しみである。
(書き手:西田聖和)
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