『Valiant Hearts: The Great War』100年経っても生き続けるもの

ゲームタイトルValiant Hearts: The Great War
    開発元Ubisoft Montpellier
パブリッシャーUbisoft
     定価:1,480円

筆者:SHINJI-coo-K (池田伸次)
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Valiant Hearts: The Great War

今から百年前、そして現在に関わる大切な話をしよう。
あなたは第一次大戦をご存じだろうか? 第一次大戦は人類が初めて体験した総力戦で、ひいては第二次大戦にも繋がるものである。ヨーロッパ圏に住んでいる訳ではない私達にとってもその意味は大きい。

本作は1914年08月に始まった大戦になぞらえ2014年08月に発売された作品で、個人に焦点を絞って痛ましさやドラマを描いた、意欲的な百周年メモリアル作品である。

Valiant Hearts: The Great War
当時は” World War”ではなく副題にあるとおり “Great War” という呼称であった。
Valiant Hearts: The Great War
本作の主な登場人物、プレイアブルキャラクターは四名

エミール
1914年、フランス・サン=ミエルの農場で家族と共に暮らしていた農夫。軍から召集され戦地へ。
カール
ドイツ人の青年でエミールの娘マリーと結婚しているが、戦争により国外退去を命じられる。
フレディ
アメリカ人の義勇兵。彼の望みは人生を台無しにした者へ罰を与えることだった。
アンナ
パリに住むベルギーの医学生で行方不明の父親を探している。
ウォルト(サブキャラクター)
タイトル画面などにも映っているドイツの軍用犬。様々な場面で様々な人物を助けてくれる。

Valiant Hearts: The Great War
動かせるバンド・デシネのようなアートワーク。開発は UBI モンペリエ(フランス)

本作の基本的なゲームメカニクスは、横スクロールアクションと、特定箇所で要求されるカジュアルなパズルが土台となっている。
ゲームの進行方向は常に右側で(例外もあるが)迷う心配もない。また、アクション部分についても凝った操作は要求されず、下記画像にあるような AD キーで車輪を回して旗を上げたり WASD キーで物を投げる角度を決めてから Space キーで放るなど、非常に取っつきやすいプレイが出来るようになっているのでアクションに自信が無い人も安心して欲しい。

Valiant Hearts: The Great War
操作の一例。操作はキーボードにもコントローラーにも両対応

物語の下敷きとなるのは欧州で、フランス・イギリス・ベルギーなどを始めとする連合国と、ドイツを中心とした国との間で起きた西部戦線が舞台となっている。

前段で示したとおり四人の登場人物がおり、チャプターや場面毎に人物や置かれている状況が変わる群像劇を採用している。
例えばエミールは農場を営んでいたが、フランス軍に召集されストーリーが展開。カールはエミールの娘と結婚しており、同じく農場を営んでいたがドイツ人のため国外退去を命じられ、フランスに心を置き去りにしたままドイツ軍兵士として暮らす様子が描かれる。四者四様異なったストーリーラインは時として交差することもある。
また、人物達は日記を書いて都度の心情や状況に関しての吐露を行うので、物語を忘れそうな時も心配は要らない。

特徴的なのが、ゲームを動かす場面では台詞に値する表現が無く、多くはカットシーンでナレーション・モノローグが語られるという点だろう。人物同士がカットシーンで会話する場面も少ない。
プレイ中はキャラクターの吹き出しに図柄・アイコンが表示されて感情表現が行われる。言語に大きく依存するのは日記や史実を示した記録などだ。

Valiant Hearts: The Great War
Valiant Hearts: The Great War

史実の要素は本作のパブリッシャー UBI が同じくパブリッシュした西部劇シューター『Call of Juarez Gunslinger』にも登場するが、膨大な量が収められており歴史的事実を確認しながらプレイ出来る。

Valiant Hearts: The Great War

本作は戦争の悲劇を軽んじず、かといって重く描きすぎないアートワークが素晴らしい。それは我々が“百年を過ぎた戦争”という題材と向き合うのに、ある種のカジュアルさをもたらしている。カジュアルであるが故に触れやすく、しかしながら触れることは意義深い。
作品に収められた膨大な歴史資料は勿論、砲兵と併走する戦車などについても史実に対して嘘を吐いていないのが、本作を誠実な作品たらしめている。その誠実さはきっと、開発者の何名かが一次大戦に関わった家族や先祖を持つという事実にも繋がっているのだろう。

そして同時に、誠実であるが故に、本作にはカジュアルではない現実も横たわっている。
例えば実際に、2016年の今なお、毒ガスや不発弾によって汚染されているフランスの地域『ゾーンルージュ(レッドゾーン)』のことだ。

Valiant Hearts: The Great War
第一次大戦で初めて用いられた毒ガス

本記事では敢えてほのめかすだけでこの話は終わり、紙幅は割かないこととする。「戦争によって多くの命が失われたんだ」という一般論が言いたい訳ではないし、啓蒙をしたい訳でもない。この記事を読み終えたあなたが、本作を通じてその事実を知ろうとするか、それとも素通りするのか、是非とも自らの意志で選んで欲しい。

Valiant Hearts: The Great War
Valiant Hearts: The Great War

終盤へ進むにつれて戦禍の勢いは増していく。仲間も一人減り、二人減り、難易度も、プレイに伴う心情への負担も、厳しいものになっていく。

Valiant Hearts: The Great War

この作品の副題はフランス語で以下のように付けられている。
『Soldats Inconnus : Memoires de la Grande Guerre』
意味は『無名戦士 : 大戦の記憶』といったところで、無名戦士とは戦没した身元不明の兵士のことを指す。
英語タイトルで『勇敢な心』というのに対し、フランス語タイトルでは意味合いが異なるということ。
本作にフランス人のエミールと、義勇兵(正規の軍人ではなく自発的に参加した兵士)のアメリカ人フレディという人物が存在すること。
彼らは友人であるということ。
・・・これらは果たしてどういう意味合いを持つだろう?

Valiant Hearts: The Great War
無名戦士の墓地は実在する

この作品は、ゲームプレイ部分で言語への依存度を意図的に下げた作品だ。言葉にするとこぼれ落ちてしまうもの、こころと、ことばの間にあるものを、描こうという意図だ。それは同時に、敢えて言葉を用いるとき、その効果を最大化する。

Valiant Hearts: The Great War

今もなお汚染された土地や、人々の心に残る痛み。第一次大戦は我々人類の歴史に大きな爪痕を遺した。
百年という長い月日によって、ようやく軽くなったものがある。けれど、それは決して忘れられた訳じゃない。
その証左が、この作品だ。

思うに、重くなったものがあるとすれば、それは、人類の歴史の血脈だろう。



本作は「忘れてはいけない」という。だが現実には、大切な人が触れていた指先の感覚でさえやがて薄れ消え去ってしまうのだ。だからこそ「思い出す」ということを大切に思う。
そして、戦争を経験していない私ですら、本作をプレイし終えた時に生じたものは、本作の名を見る度、思い返されることだろう。

かつての犠牲者の遺体はもう土に還ったが、その犠牲は私やあなたや見知らぬ人々が生きているという現実によって、生き続けている。

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