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『The Silver Case (シルバー事件)』銀の価値は腐らない―ウエハラカムイ、再び覚醒す

ゲームタイトルThe Silver Case
    開発元GRASSHOPPER MANUFACTURE INC.
パブリッシャーGRASSHOPPER MANUFACTURE INC.
     定価:1,980円

筆者:SHINJI-coo-K
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これよりカルト的名作と呼ばれた本作『シルバー事件』の概要に迫る。移動しながらスマートフォンで読むのもよし、パソコンで腰を落ち着けて読むのもよし、だ。なお、今回はレビューというよりバイヤーズガイドのような記事なので、その点の注意を怠らないように!

The Silver Case

・17年の時を経て現代に蘇った『シルバー事件』

本作のオリジンは 1999 年にプレイステーションで発売された。それを下敷きにフルリマスターし、パソコン環境でのプレイを実現したのが本作『シルバー事件 HD リマスター版』。これはウエハラカムイの熱狂的信奉者にとっては常識だが、あなたはまだウエハラカムイが何者なのかも知らないかもしれない。そこで彼に関する概要を示す。

The Silver Case

・伝説の犯罪者であり物語の中心人物“ウエハラカムイ”

ウエハラカムイはシルバー事件と呼ばれる事件の被疑者だが、肝心の事件の詳細は一切外部には公表されていない。逮捕時に精神的な問題を抱えており精神病院に“収容”されていたが、物語の序盤でどうやら彼は逃亡を図ったようで、そこから物語が動き出す。

The Silver Case

・ウエハラカムイを中心とした本作の思想

本作は「犯罪、及び犯罪者とは何なのか」というテーマを持つ。ウエハラカムイという極めて実在性が薄く、それでいて存在感のある犯罪者像はオリジナル版発売当時の『酒鬼薔薇事件』の影響を多分に匂わせる。当時、彼を模倣した犯罪が年齢層を問わず横行したように『犯罪は伝染する』のであり、その思想は本作の根幹にも引き継がれる。

・シルバー事件のオリジナリティたる“フィルムウィンドウ”

特徴的なインターフェイスである“フィルムウィンドウ”はプレイヤーの視線誘導が巧みで、喋っている人物へのフォーカスや現在のロケーション、チャプター名など(上部の赤帯部分)が表示される。ムービー、テキストや人物の顔など、複数のウィンドウが一つの UI として機能していながらも、ごちゃついて見づらいというネガティブな要素はなく、一貫してシンプルな印象を与えているのが素晴らしい。フィルムウィンドウは専用のエンジンで開発されたものだそうだが、複数のレイヤーや要素を一画面で表現しているのは実に見事である。

The Silver Case

・本作のテキストの魅力

名言に溢れた本作には、ファン同士がキーワードのように交わせる台詞が実に多い。「五万貸してくれ」だとか銃弾を避けて「縫い目が見えた」など(野球の球をこう言う事がある)枚挙にいとまがない。テキスト全体で見ても時に奇妙さを覚えるほど特徴的な文体を備えており、例えば妻の事を“ワイフ”というしスイッチのことは“スウィッチ”というしオレは“己”と表現される。もちろん語尾に付けるちっちゃい“っ”はカタカナの“ッ”だッ!
ただし、こういったテキストのノリにフィーリングが合わない人も居るだろう。あなたがそうでない事を祈るばかりだが、特徴的な文章は好みが合えば虜になるような深みがある。

The Silver Case

・シルバー事件に関わる人物達の魅力

本作を魅力的たらしめている要素のひとつに、登場人物の魅力がある。「24署凶悪犯罪二課特別捜査官 クサビ テツゴロウ」はベテラン捜査官だが常に金欠、挙げ句の果てには給料日数日後に前述の「五万貸してくれ」というセリフをのたまうのだ。
本作は二部編成になっていて刑事や捜査官が動く群像劇である『Transmitter』編と、フリーライターである“モリシマトキオ”がウエハラカムイの実像に迫る一人称の『Placebo』編の二つがある。このモリシマトキオのパートでは独白を多く聞くことになるが、シニカルな言い回しを好む割には叙情味のある言葉を使ったりと実にハードボイルドらしい雰囲気を担っている。飼っているアカミミという名の亀に話しかける日常のワンシーンは哀愁すら漂う。彼の周辺人物だって魅力的だ。バーのマスターは落ち込んでいるモリシマに「落ち込んでいるときはナイフと、一握りの材木を買うと良いんですよ。そしてその木を削るんですよ。」と話しかける。「落ち着きます。何かを作ると良いんですよ、案外神様も落ち込んでいるときに泥をこねて人間を作ったのかも知れません」なんて具合だ。そんなマスターは物語の終盤で、彼の性的指向すらも打ち明けてくる。

The Silver Case

・シルバー事件に込められているもの

シルバー事件は大人向けの作品だ。人生の苦みを知っている、そんなあなたに向けられた作品だ。
本作が 17 年の時を経ても受け入れられている現状を鑑みるに、グラスホッパーマニュファクチュアの最初の衝動は時を超えてプレイヤーに伝わったのだろう。久しぶりにプレイしてみたが、本作に込められた、処女作を高い次元に持っていこうという情熱の量は凄まじい。独特なテキストやサウンド、そして実験的なフィルムウィンドウなど、インディペンデント・スピリットに溢れているとも思う。
ぎこちなく、ひょっとするとかったるいとも思われそうな移動や探索パートは、短所のように見えて、ゲームへの介入感を高めるためには必要不可欠な部分だ。
物語も、『真実と事実は異なる』という考えによって多層的な構造が達成されており、普遍する「ハードボイルドさ」と偏在する「狐につままれるような感覚」も同時に味わえる。

The Silver Case

雄弁は銀、沈黙は金、という言葉には相反する二重の意味がある。
時代によっては金よりも生成が難しかったが故に銀の方が高価だった時代がある。
実に雄弁なテキストを持つ本作は銀を取っているが、劣ってはいない。

「花」にかしぐ滴がこぼれるとき「太陽」はそれを照らしまた「雨」が降る。銀色の雨が降る。
本作はそうして起こる時の風化をはね除け、未だに渋い銀色の光を放っているのだ。


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