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『Never Alone (Kisima Ingitchuna)』あなたはもう、一人ではない

ゲームタイトル:
開発元:
パブリッシャー:
定価:
1,480円
DLC:
498円(エクスパンション)
698円(サウンドトラック)
1,816円(バンドル版)
SHINJI-coo-K 筆者:SHINJI-coo-K
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Never Alone (Kisima Ingitchuna)

「とにかくもっと理解して欲しいのは、私達は博物館にある剥製じゃないってこと。イヌピアットの民も文化も生きているの」
こういった言い回しで始まる本作は強い感銘を与えうる名作だ。本稿を綴る目的は一つ、読み終えたあなたがこの作品を購入しプレイしてくれる事、購入してはいるがプレイせずにいるあなたをプレイへ導くこと・・・つまり、本作の体験を一人でも多くの人に届けることなのである。

◆イヌイットとイヌピアットの違い

あなたは「エスキモー」という言葉を聞いたことがあるだろうか?「エスキモー」とは北極圏のアラスカなどに住む先住民族の集まりを指す。アラスカ北部より東に住むのが「イヌイット」という民族で「イヌピアット」はその同種族となる民族のことである。アラスカ中部より西が「ユピック」という民族であるがこれらは単一民族ではなく、より細分化されるグループを持つ。また、エスキモーという呼び名はカナダとグリーンランドの民族は呼ばれることを拒否しているため、取り扱いが難しく公では用いられない言葉でもある。本作ではアラスカに住む「ユピック」と「イヌピアット」のうち「イヌピアット」の民族を大きく取り扱っている。
「イヌイット」とは大きな分類で、その中に「イヌピアット」という先住民族がいると思ってもらえればいい。

◆本作の基本的なゲームシステムと物語
Never Alone (Kisima Ingitchuna)

本作はイヌピアットの言葉で“大地”を意味する名を持つ娘「ヌナ」と、白い「ホッキョクギツネ」を代わりばんこに操作しながら進む。横スクロールのカジュアルなアクションゲームをベースに時折パズルゲームの要素も入るが、プレイフィールは総じて取っつきやすく、ゲームプレイの素養が薄い人でも気軽にプレイできる。実際に、ゲームを全く遊ばない知人と一緒にローカルで協力プレイをしたが、最初こそコントローラーの取り扱いに苦戦していたが、三十分もすればやや危なげのある感じでプレイを楽しんでいた。

また、ゲーム内では“精霊”という存在に助けを借り(主に足場の確保など)ながら進むが、その精霊を出現させるのは「ホッキョクギツネ」、さらに氷などを粉砕するのは「ヌナ」にしか出来ない。一人ではなく、二人で一つとなってプレイを進めていくのだ。勿論一人プレイでも簡単にキャラクターを切り替えられるし、追従するキャラクターのAIはかなり賢い部類に入る。スタックしてしまい、頻繁にキャラクターを切り替えなければならないような事は起こらない。

物語としては、故郷を襲う止まない吹雪を止める為に旅立った「ヌナ」が、「ホッキョクギツネ」と出会い共に原因を探る、といった感じで進行していく。この物語は実在する伝承民話「クヌーサーユカ」に由来する。原典では一人の男性が主役として活躍する物語だが、ゲーム作品に落とし込むにあたり性別を女性にして、動物のパートナーを出すという改編を行っている。

◆ドキュメンタリーをゲームメディアに落とし込んだ作品
Never Alone (Kisima Ingitchuna)

また本作をユニークな作品にしている特筆すべき点は、ゲーム内の様々な要素と同期するように実在の人物によるドキュメンタリー、インタビュー映像を閲覧できるようになる点にあるだろう。登場する人物達はイヌピアット直系民族であったり、実際にイヌピアットとして暮らしていた人物であったりと、本作の物語や精神にも深く携わっている。

Never Alone (Kisima Ingitchuna)

本作における重要なドキュメンタリーパート「文化的背景情報」の実写映像に登場する人々は、とにかくハツラツとしていて笑顔が眩しい。穏やかな声で笑う。何処かユーモラスだ。そんな彼らは“人と社会とをつなぐものとは何か”を教えてくれる。

例えばこういった話がある。一日中とにかく忙しくて、夜、寝る段になって年長者が横になりながらこう言う。「何か話を聞きたいねえ」と。そうやってお話が始まるのだが、このお話というものは口伝の民話であり、コミュニティの結束を強くするために用いられ、さらには知恵を伝承する意味合いも持っている。

Never Alone (Kisima Ingitchuna)

本作はエデュケーション(教育)の要素も強く、幼いプレイヤーにも門戸を開いている。その証左として字幕の文字は大きく、漢字も平易なものを中心に用いられ、ひらがなに置き換えられている事も多い。
また、ゲームプレイとイヌピアットの文化紹介の繋げ方も見事だ。プレイ時に「これは何を意味するのだろう?」と疑問を覚えた所に、「文化的背景情報」がアンロックされて閲覧できるようにデザインされている。
本作が提示したフォーマットでイヌピアットとは異なる文化、例えばネイティブアメリカンなどのものを扱っても成立しうるので、追従する作品が現れても良いと言えるだろう。

冒頭に紹介した「私達は博物館にある剥製じゃないってこと」という主張は、ドキュメンタリ映像に登場する人物達が民族的モチーフとなるアイテムを身につけながらも、現代人の服装をベースにしている点からも読み取れる。私達は現在進行形で生きている人間なのだ、という主張が伝わってくる。

◆決して一人ではないということ
Never Alone (Kisima Ingitchuna)

本作は基本となるゲームプレイが「ヌナ」と「ホッキョクギツネ」の共生であり、お互いがお互いに思いやりながら進まなければならない。「ヌナ」で障害物を壊し「ホッキョクギツネ」で精霊を呼び出し道を切り開く。そう、本作は“一人では進めない”のだ。その上、ゲームの終盤、このメカニクスにもツイストが発生する。

Never Alone (Kisima Ingitchuna)

本作はイヌピアットが持つ“コミュニティとの繋がり”や“属するコミュニティの為に立ち上がる事”の重要性を、平易な表現でてらい無く伝えてくれる。それは「誰もが良い生活を求めているんだから、誰もが良いコミュニティを求める」という当たり前の認識に基づいている。

本作のプレイを通じ、あなたはもう、一人ではなくなる。
何故ならば本作によって、「人は一人では生きられない」という現実が突きつけられるからだ。
そのことを悲観的に表現するのではなく、一人では生きられないという事実がいかに素晴らしく美しい事であるのかを、本作は肯定的に描いている。

何千年も昔から、剥製にならず今なお生き続ける人々の存在、それこそが“決して一人ではない”という事を裏付けているのだ。

決して一人ではない、それはイヌピアットだけではなく、今日、生きる私達もまた同じなのである。

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