『Her Story』類推の快楽

ゲームタイトルHer Story
    開発元Sam Barlow
パブリッシャーSam Barlow
     定価:598円

筆者:SHINJI-coo-K (池田伸次)
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※最初に※
この作品には有志による日本語化modが存在している。よってスクリーンショットはそれを使用したものである点に留意頂きたい。

Her Story

この作品は「Googleさえ使えればプレイ出来る」という売り文句を持っている。勿論私はGoogleを使える。それはあなたも同じはずだ。そして私は物事を考える事が出来る。アナロジー(類推)によって、物語の穴を埋める事が出来る。そう、それはあなたも同じなのだ。
その事を踏まえて、以下の文章を読んで頂ければ幸いだ。

Her Story

ゲームを起動すると映し出されるのはCRTモニタ(ブラウン管のモニタだ)を模したパソコンのデスクトップ画面だ。その画面上ではデータベースアプリが起動されており、そこにはとある女性の供述ビデオがある。
プレイヤーは実際のパソコンを操作するようにデータベースへ単語を打ち込み、検索結果として表示されるビデオを見る。そしてこの女性にまつわる謎を紐解いていく。
そしてビデオの数は驚くほど多く存在し、また、それぞれのビデオ一つ一つに意味がある。

Her Story

本作は類推と、それによるファジーな答えを得る作品である。
本作の基本的なルーティーンは概ね上記の通りだが、もう少し掘り下げよう。

まずゲームを始めると、データベースアプリには既に“MURDER”(殺人犯)という単語が検索されている。ついで検索結果として四つ表示されているビデオを見ると、ある疑問が発生する。「ビデオの女性が言及していた“Simon”とは何者?」という疑問だ。プレイヤーはその単語を検索することによって、手掛かりを得て類推する。「おそらく“Simon”とは○○だ」、と。

Her Story

この作品はプレイヤーが解き明かしたくなるような疑問を呈するのが非常に巧みである。とても気になる“何か”を配置するのが巧いのだ。それは映像そのものにも、発言そのものにも秘められている。そしてプレイヤーの類推を促すのだ。
その類推がおおよそ正答であろう、という確信を得たときの心地よさ、快楽。これこそが本作品の面白さの核なのだ。

Her Story

類推を重ねて浮かび上がるストーリーもまた興味深く、非常に感銘を受ける内容となっている。
データベースに散在している点と点が繋がったとき、私は喜びと興奮に満ちた溜息を深く吐いた。

Her Story

また、類推の補助としてデータベースに打ち込んだワードが履歴として残るようになっており、検索性も高くストレスを感じない。もっとも、検索は英単語、英文しか受け付けないので気になった言葉はメモをしておくといいだろう。ビデオはシークバー付きなので気になる単語をメモする事も簡単だ。

Her Story
こういった古典的な“ゲーム”も用意されている

プレイヤーに辛抱強さを求める作品ではあるが、それに見合う興奮を返してくれる『Her Story』がもたらしたものは、ゲームの可能性であり、ミステリの可能性だ。
ビデオを通じて語られる“彼女”の人生も、深みや苦みや喜びがあり、たった五時間にも満たないプレイで、私はとても深い体験をした。それは彼女が綴ってきた、人生に関与する物語を覗き見たからだろう。

Her Story

そう、深い類推から得られるその解釈によって覗き見た、彼女の、物語を。

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