今回紹介するゲームは「Wargame: Red Dragon」、現代戦をテーマにしたRTSである。Wargameはシリーズ物で本作品が三作品目となるが、ストーリー的なものは存在しないためそれぞれ別作品と言っても良い。冒頭でも触れた二度の世界大戦の後がテーマとなっており、実在の東西国家に分かれて戦争を行うゲームと考えていただければ良い(やや短絡的な言いようではあるが)。
本作品は一般的なRTSと呼ばれるジャンルの中でも異端である。同ジャンルでも有名なタイトルと言えば「Age of Empire」であったり「Star Craft」のような、生産と操作量が密接にリンクした難しいジャンルといったイメージがある。だが本作はそれらの作品と違い、最初からユニットを保持した状態で始まり、いかに理想的な戦闘を行えるかというシミュレーション的な側面を擁している。そのため操作量はさほど必要とせず、ユニットに対しての知識と将棋やチェスのような天才的な一手の決断が全てを分ける。
それは本作品のデッキシステムからも窺うことが出来る。国家毎に使えるユニットが決まっており、そのユニット群の中からどれを使いたいかをピックアップして使うゲームシステムとなっている。カードゲームのデッキを組む感じと言えば伝わるであろうか。
このデッキシステム、本作品にはチュートリアルがないため補足として紹介しておきたいが、東西国家は対戦では共産国家(ソ連や中国)と資本主義国家(アメリカや日本)の異種思想国家同士での同盟が組めない。対戦時には東西国家のどちらかに所属して戦闘しなければならないため、東西国家どちらもデッキを作っておいた方が良い。一応東西共にデフォルトデッキは用意されているが、どう擁護しても使い物にならないほど弱い構成になっている。
デッキ名は相手にも味方にも見えないため、適当に好きな名前をつければ良い。だが、命運を分けるのは「国家」、「兵種」、「年代」の3項目だ。本作品のデッキは縛りを設けることで、加えられるユニットの数と質を上げることが出来る。例えば国家を縛ることによって国家毎に存在するプロトタイプユニットを使用することが出来る。ただしユニットタイプを縛ればその兵種以外はほぼ使えなくなったり、年代を縛れば80年代以前か85年以前のユニットしか選択出来なくなるなどの強いデメリットも同時に存在する。初心者の間は国家以外を縛らないことを強く推奨する。
デッキはコスト制で、それぞれ対応した場所にユニットを追加していく形となるのだが、海軍以外は段階的に枠のコストが上がっていくためあれもこれもと追加出来ない。この、何が必要かを考えていく取捨選択が本作の一つの楽しみであるのだ。
本ゲームの勝利条件はルールによって変わるが、ここでは最も一般的な『Conquest』で解説しよう。マップ上では拠点が細切れに分かれており、占有した場所と時間で入るポイントを一定値確保できれば勝利となる。確保には星マークの着いた指揮ユニットを独占的に配置する必要があり、双方の敵ユニットが存在する場合は係争中となり占有にはならない。
そうなると、相手が占有している所へ攻め行って奪取しようると考えるのが妥当だろう。だが、本作品がRTSとして異端と述べたのは、この攻防部分で確実に膠着する作りとなっていることに所以する。
兵士は建物や森といった遮蔽物に、戦車や車両も森陰に隠すことで非常に堅牢な守りとなる。こうなると、圧倒的な戦力差をもってしても簡単に破られることはない。だがこれは相手からも同じで、レッドラインを目の前にして睨み合いとなる。
「結果を変える一手のようなものはないのか?」と疑問に思うだろうが、無論存在する。戦闘機による爆撃であったり、広範囲爆撃車両によるいぶり出しであったり、視界外からの奇襲といった方法が挙げられる。
なお、兵士には状態異常もある。視界外から射撃を受けたり燃やされたりすれば、動揺してパニック状態に陥る。パニックになれば攻撃に手間取り、命中率も激減する。その時こそ攻め入るチャンスでもあるのだ。
そのようなこともあり、会敵前の膠着状態を理想的に作り上げることは非常に重要となる。どう当たるか、どのように攻めたいのかを頭に描きながら、ユニットの増援、戦闘機の支援、後方からの砲撃などで実現していくのだ。
本作品には歴代シリーズにはないキャンペーンモードがある。だが、シングルプレイモードとはいえ経験者でも難易度が高いため、初心者が最初にプレイするにはオススメできない。フレンドと共にAIと戦うのも一つだが、ある程度コツを掴めばマルチプレイの真っ只中へ飛び出してもみるのもひとつだろう。対人プレイにおけるカタルシスは勝利なくしては得られないものである。
また、本作品に登場するユニットは実在の配備を参考にしており、尚且つユニットのボイスは全て現地語で収録されている。自衛隊のボイスも元陸自の方の協力で録音されているため、筆者の知り合いの元自衛官でさえ「当時を思い出す」とボヤくレベルであったりする。
もしあなたが兵器の知識や戦略構築なら誰にも負けないと思うなら、RTSの極北である本作品に挑んでみてはいかがだろうか?戦場が君を呼んでいる。