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Life is Beautiful『CLANNAD』

ゲームタイトルCLANNAD
    開発元VisualArts/Key
パブリッシャーSekai Project
     定価:4,980円

「まーた紙芝居か。」

そんなセリフを何度見てきた事だろうか。この言葉は日本式ADVゲームこと、ビジュアルノベル(VN)に対して語られる侮蔑の言葉である。2016年、既にSteamにおいても数え切れない程のVNが販売されておりVNはゲームじゃ無いと言った言葉がフォーラム上で散見される事もある。しかし、VNの歴史と起こりを見ていくと実に30年近い歴史があり、紙芝居と称されるには論外な侮蔑であると言わざるをえないのである。まずはゲームの話の前に昔語りをしよう。

1970年バブルの真っ只中、今でも有名な光栄より「ナイトライフ」と呼ばれるプログラムカセットが販売された。本作がPCにおける、日本最初のアダルトゲームと呼ばれる事もある。まだゲームという存在そのものが弱く、アーケードでもシンプルな電子ゲームがチラホラと出てきた時代である。手探りで多種多様なゲームが生み出されていく中、PCゲームも手探りで各社開発されていくのであったが、その後に発売される主要な家庭用ゲーム機器と比べると、お世辞にもゲーム単体でプレイするスペックは満足いくものではなかった。まだPCは仕事で使うもので、娯楽で使うモノでは無いと言うのがメジャーな考えだったからでもある。そして日本と海外ではADVゲーム、ひいてはPCゲームは別個の進化を辿ることになった。

CLANNAD
CLANNAD
移植版であるセガサターン版 原版はフロッピーディスク(*2) 15枚と言う多さも話題になった。故「剣乃ゆきひろ(菅野ひろゆき)」によるシナリオの濃密さ、世界観、他のADV以外のタイトルにも大きな影響を与えた。SFとして見ても素晴らしい作品である。

海外ではポイントアンドクリックタイプのアニメーションが多いADVが発展し、日本では文字を読むタイプのコマンド式ADVが互いに発展した。写真は日本でもセンセーションを巻き起こした「世界の果てで歌を歌う少女YUーNO」。当時はゲーミングPCという概念がなく、Windows95が登場するまで、家庭PCは国民機と言われるNECのPC-98シリーズ(*1)が猛威を振るった時代でもある。海外でも日本でもアーキテクチャの仕様は違えど、DOSゲームの時代でもあったのである。

CLANNAD
CLANNAD

しかし時代は進む。Windows95の登場により日本でも爆発的にPCが普及し、ゲームの世界も遂にWindowsOSへと土俵を移したのだ。世界では「Doom2」や「Quake」が姿を現し、ジョン・ロメロと言ったカリスマが登場するが、ここでは触れず表に出辛いアンダーグラウンドの話に戻る。
(画面写真はユニバーサル仕様でマッキントッシュでもプレイできた「FreddyFish」 海外でのPC向け知育ゲームである。日本でも吹替版パッケージが発売されている)

Windowsはアンダーグラウンドの世界でも革新を果たした。発色数の増加、CDROMドライブとHDDの普及(当時はまだフロッピーが主流であった)が一気に高容量、微細な原画再現へと移って行ったのである。そして一例を挙げるならば”ビジュアルノベル”と言う言葉を生み出した製作会社『Leaf』(アクアプラス)である。「雫」、「痕」、「ToHeart(*3)」の三部作でのし上がり、現在では知らない人の方が少ないであろう大手メーカーとなったことは、今更説明不要であろう。この頃からビジュアルノベルは、PCスペックをあまり要求しない上、開発も手軽ということで幾千もの作品が産み出されるようになり、星のように儚く消えていった。そして1999年、ある一つの作品が大きなうねりを日本に巻き起こした。

CLANNAD
起動画面 当時TVでPVを見たときに「これエロゲーなんか?」とつぶやいた思い出が懐かしい

パブリッシャーであった『VisualArts』のメインブランドである『Key』のデビュー作「Kanon」である。創業スタッフ陣の不朽の名作であり、音楽からシナリオまで今でも評価が高い。
(もともと、『タクティクス』と言う別の会社の「ONE 輝く季節へ」と言うタイトルのスタッフでもあり、発売前から期待はされていた。)

続いて2000年には「Air」が続き、OP曲である「鳥の詩」と並び、アンダーグラウンドであったアダルトゲーム界隈外にまでその名前を知らしめた。
この作品以降「I'veサウンド」というブランドが確立された事も特筆すべきことだろう。

CLANNAD
Air限定版 前述のKanonは数が少なかったこともあり現在では限定版はプレミア価格がついている

しかし、ここから4年ほどメインブランドである『Key』は沈黙を続ける事になる。

「CLANNAD」という作品自体は、「Air」の発売後直ぐに公表されており、アダルトゲームとして2002年春頃に当初は発売予定であった(当時延期の続いていた別の注目タイトルと併せて延期三姉妹と揶揄されていた)
だが、発売までその後4年程歳月が経ち、当初の予定とは違い全年齢向けのADVとして販売されたのである。

前述で「CLANNADは人生」と評されると言ったが、それはこのゲームが主人公である朋也(名前は変更可能)の不思議な出会いと、そこからの成長や変化が描かれる成長譚に他ならないからと言える。
主人公は家庭の事情もあり鬱屈した学校生活を送っており、他人には簡単に見せないものの暗い感情を覗かせている。

CLANNAD
初期版起動画面

その後コンシューマーハードを経て、数多の熱い声に推され世界へと飛び出したのが今回のSteam版「CLANNAD」である。
長い解説を経たが、本作品を表した当時のコピーがある。
「CLANNADは人生」
某掲示板で生まれた言葉ではあるのだが、これ以上ピッタリな形容詞は他に無いだろう。発売までの四年の間に、VNはハードカバーの小説並みの文章量、美麗な背景、美麗なキャラグラフィック、ハイクオリティな音楽を求められるようになり、当初のADVの特徴である低予算、アイデア勝負の世界から剥離を重ねていき、映画を一つ生産、消化するかのようなモノに変化していた。本作も例外ではなく、その特徴を余すことなく発揮している。当時は音声こそなかったものの、圧倒的な文章量、主人公の成長譚、樋上いたる氏による特徴的で印象に残る人物グラフィックなど枚挙に暇が無い。
さて、ようやくではあるが今回の紹介に移ろう。

前述で「CLANNADは人生」と評されると言ったが、それはこのゲームが主人公である朋也(名前は変更可能)の不思議な出会いと、そこからの成長や変化が描かれる成長譚に他ならないからと言える。
主人公は家庭の事情もあり鬱屈した学校生活を送っており、他人には簡単に見せないものの暗い感情を覗かせている。

CLANNAD
「学校は好きですか?」

学校の前の長い坂で佇む女の子から唐突に質問を受ける所から、本作は朋也の人生に別の世界への入り口を開く。正反対な生活を送ってきた二人の人生が交差を迎えるこの冒頭は、これから何度も何度も見る事となる。

CLANNAD
一番の友人である春原陽平、毎回ロクな目に合わないが本作の中でも印象に残りすぎるほどキャラが強い

鬱屈はしながらも仲の良い友人は存在している。別に孤独というわけでは無い。ただその人生にポッカリとどうしようもない穴が空いてしまっているのだ。
人生における目標が無くなった時、打ち込んでいるものがなくなってしまった時、夢中になれるものがわからなくなった時。
ただただ、無意味に日々を過ごす事に疲れてさえしまった時。
本作は人生で誰しもが味わう事になる強烈な「喪失感」を的確にえぐりこんで来る。
主人公の朋也の行動を通して、強烈なフィードバックをプレイヤー自身も負う事になるのだ。

ヒロインと出会い、恋愛関係を紡ぐ事で疑似体験を通じ達成感や恋愛感情を抱くのが大多数のVNではあるが、「CLANNAD」では、その疑似体験によって主人公である朋也を通じ、プレイヤー自身の成長も疑似体験することができる。
本作におけるExperiment(経験)は質が高く、壁を越えていく事であったりと、受身での経験が主流であるVNでの定説を覆す朋也の行動を通じる事でプレイヤーの感情を常に揺さぶり続ける。
他人に意見を代弁させるわけではなく、「朋也」と言う確固たる主人公を構築し、プレイヤーの選択と連動する彼の行動によってストーリーがドラスティックに動いていく。

CLANNAD
今回のSteam版で追加されたDangopedia 海外向けに日本の独自文化の解説も兼ねている

更に追加シナリオも別で販売されている。当時発売後にヒロインの中でも人気が高かった智代にスポットライトを当てた「智代アフター」、本編の補足とまとめである「CLANNAD 光見守る坂道」の二本で、本編プレイ後に更に考えさせられる内容となる。
特に「アフター」は内容が今でも賛否両論分かれる程であり、本編における「喪失感」を更に掘り下げた作品である。

VNは人によっては、人生で触れる機会が無く過ぎ去ることもあるジャンルであろう、FPSやアクションのようにプレイングフィールで即座に理解できる作品とも言い難い。文章を読み込み、内容を掘り下げ、咀嚼し、誰かと感想を語る事で世界は広がっていく。2016年現在、日本では年間100以上のVN作品が発表され、消費されていく。その中でも記憶に残り、言葉として紡がれていく作品の少なさが、このジャンルのハードルの高さとも言えるだろう。
今回紹介した「CLANNAD」は間違いなくそのハードルを越える作品の一つであり、あなたにとっても素晴らしい経験となるに違いない。

CLANNAD
「その話は今でも輝いている。」

謝辞
今回の執筆にあたり、一部のスクリーンショットを提供していただいた友人のC氏に感謝の言葉を送ります。

*1
PC/AT互換機という仕様が進化を遂げて今のPC環境に繋がっているのだが、当時はDOSと呼ばれるコマンドベースのシステムがメインである。詳しい説明は省くが、日本ではPC-98はPC/ATと互換性がなかったため専用のWindows95も発売された。現在では当時のゲームをプレイするために所有しているユーザーも多いが一部の中小企業等ではシステムの一部として現役で稼働していたりする。

*2
ストレージデバイス、保存ボタンのアイコンにもなっている。当時は1.25M「も」入る記録媒体であり2000年近くまでCDRが爆発的に普及するまでは広く使用されていた。現在でもBIOSの更新等でも使用されることはある。

*3
1996年当時アダルトゲームの主流はハードコアエロスであり、「雫」「痕」はその流れを辿っていたが、三部作目は真逆の純愛学園物と言う王道に戻った。しかしこの転機は想像を超える大ヒットとなりコンシューマー移植、アニメ化等の業界に与えた影響の大きさは今でも計り知れないが、人型ロボットやAIの話になると今でも名前を挙げられるほどの影響力を持つ。分かる人には「HMX-12」と言う単語だけで話が通じる。

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