『9.03m』-未済のドキュメント-

ゲームタイトル9.03m
    開発元Space Budgie
パブリッシャーSpace Budgie
     定価:98円

筆者:SHINJI-coo-K
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9.03m

あなたは「偽善的だ」と露悪的に振る舞う必要は無いし、反対にこの作品を素通りしても誰からの非難も恐れるべきでない。 これは抗いがたい現実を模した作品で、果たしてこの娯楽はそれからの逃避であるべきだろうか。 今、自分に導き出すことが出来る答えは二つ。 どちらであっても良いだろう、という答えだ。 或いは第三の選択として二者の間を彷徨い模索し続ける道もあるし、それはしばしば行われてきた。 この作品には現実がある。 言わばドキュメントだ。現実に対する批評性を備えた作品だ。

私はこの作品について一万文字の日本語を費やして語ることが出来るし、それはそのまま痛ましいあの日を語ることと同義だ。

9.03m

果たしてこの作品をプレイすることが追悼の意味を持つのか、それは今、作品に触れることが出来る私たちがそれぞれの思いを持てばいいと思う。

ただ、繰り返すが、偽善だと露悪的に振る舞う必要は無いし、この作品を素通りしても非難されるべきじゃない。 例えば「娯楽メディアで追悼だなんて」と言う人も居るだろう。 事実、この作品の持つ道徳性は正しい。 正しいが故に、私は購入後の起動を何度も躊躇った。

9.03m

ここまでこの文章を読んで気付いている人も居るかも知れないが、私は意図的にゲームという言葉を避けてこの作品を語っている。 理由はシンプルで、これは遊びではないからだ。私達が共有すべき体験だからだ。 それは忘れがたい震災そのものだし、震災は人々の命を奪い去った。 あなたに強い不安を与えた。 この作品をプレイすることはそれらの感情と向き合うことにもなる。 ならば遊びではやれないし、実際そういった覚悟を要することがあらかじめ分かっていたので、購入後、ずっと起動せずに居た。

そして意を決してプレイしたが、常に苦痛が伴った。 かつてそこには生きていた人々が居て、そして死んでしまったのだ。その思い出は西海岸へと流れ着き、この作品が出来上がった。 何も言わないでは居られなかった、そして、偽善という言葉に踊らされず作り上げた開発者に敬意を表したい。 ひたすらに美しいという事が痛みを表現していない、という評を見かけたが、それはどうだろうか。 痛みは我々の中に既にあるし、故人を偲ぶ事に殊更悲惨さを足すべきじゃ無い。 私はそう思う。

03月11日に対する感慨は、日本人にとっては複雑だ。 作品を開始してからきびすを返して町のほうに向かうと、訪れる結末はシンプルだが、そこに開発者のメッセージがあるように思えてならない。 つまり“向き合え”という事なのだろう。

9.03m

私達日本人にとってあの震災はまだ終わったようにも思えず、いまだに原子力発電所に対する姿勢も定まらない。 現在進行形のようにも思えるし、ピリオドを迎えてスタッフロールが流れているようにも感じない。

それほど、我々日本人にとっては複雑な感情を呼び起こす作品で、言葉にすることが躊躇われるほどだ。 こういった作品が日本国内から出てこないのはとても理解できる。 強い畏れがある。 そしてまた、我々にとってはまだ“済んでいない”出来事でもある。
この作品の評はとても難しい。 何故なら震災を語ることとほぼ同義になるからだ。 しかし、私は筆を執らずには居られなかった。 どうかあなたも、思いを馳せて欲しい。 震災をモチーフにした作品を通ずることによって、あの日の痛みに色彩が宿ることを。 そして開発者の“人は、その死に際して、親しみにも似た念を持って語られるべき”という主義を支持したい。

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