見てはいけないものを、見た『Republique』

ゲームタイトル:
開発元:
パブリッシャー:
定価:
2,480円
Litchi 筆者:Litchi Steam プロフィール

『Republique』は、とある施設からの脱出を目指すゲーム。
いわゆる「ステルスゲーム」ですが、本作の醍醐味は全5章から構成されるシナリオにあります。本作の魅力を語る際、アドベンチャーゲームという要素が非常に大きなウェイトを占めていると言えるでしょう。BGMや独特なカメラワークを始めとした演出に加え、意味深な単語が並ぶ会話や、特殊で謎だらけの環境。ミステリー色の濃い展開が、この作品をより魅力的にしているのです。

公式トレーラーから。
元々スマートフォン向けに発売された経緯があるため、PC版はリマスターという扱いになっています。
・張り巡らされた監視の目

本作は、プレイヤーが主人公「ホープ」に対し、監視カメラの映像頼りに電話で指示を与えている、という設定になっています。つまり、プレイヤー自身は主人公ではありません。第三者として登場人物の一人に組み込まれているのです。以上を踏まえたうえで、ゲーム画面をご覧ください。

Republique

こちらが、本作の日常風景。プレイヤーの目=監視カメラの映像であることから、俯瞰視点になります。この状態から別の視点に切り替えるには、近くにある別のカメラにアクセスすればOK。Ubisoftの『WatchDogs』のようなシステム、と言ったほうがわかりやすいでしょうか。ちなみにこのシーン、会話イベント中になりますが、その間もカメラは自由に動かせますし、別のカメラに移動することもできます。普通の会話シーンでも、別の角度から見るだけで違ったように見えるから不思議です。本作では、このカメラ仕様がひとつの演出としても機能していると言ってよいでしょう。

Republique

こちらの色が変わった画面ですが、何もバグっているわけではありません。本作の目玉である「OMNIビュー」モードを使った画面になります。この状態になると、ゲーム内の時間が止まり、調べられるアイテムがハイライト表示されます。例えばこの画面の場合、緑色のロッカーにはアイテムが入っていることがわかります。また、画面上部にある青いアイコンを調べると、対象となるカメラの視界へ移動することができます。
この「OMNIビュー」を効果的に使うことで「ホープ」だけをその場に残し、ずっと先まで偵察を行えます。つまり、部屋の構成や敵の配置、巡回ルートなどの情報を、物理的な障害を無視して取得できるということです。しかも、一切足跡を残さないので、絶対にバレることがありません。以上のことから、本作のステルス要素はあまり難しくないと言えるでしょう。

Republique ゲーム開始直後のマップ情報です。部屋が連なっているせいで、一箇所からの角度だけだと見通しが悪いんですよね。カメラの先行渡り歩きは攻略の基本になります。

さて、ここで重要になってくるのが、この特徴的なシステムと視点が、ステルスゲームとしての側面へどういう影響を与えるかです。このゲームの操作性を一言で説明すると、”ポイント&クリック方式”になります。「ホープ」に指示を出す際、特定の箇所をクリックだけで、それが指示となるからです。

Republique

画面左奥の白い丸が見えますか? あの丸の付近をクリックすると「ホープ」が指定場所となる箱へ向かい、陰に隠れます。その際の移動経路は、通路に沿った最短コースです。状況によっては小刻みな指示が必要になるケースもありますが、クリックするだけで操作できるので、やってみると、さほど面倒ではありません。むしろ隠れる、調べるなどの行動も全てこの形式で指示するため、慣れると実に楽です。「OMNIビュー」使用中の時間停止も合わせると、鬼気迫る場面でものん気に見渡せる余裕ができます。
ところで、勘の鋭い方なら「定点位置からの指示と隠密行動のふたつは、相性が悪いのでは」と気づくかもしれません。それについて、ひとつ例を出して説明します。

Republique

ホープ」がカバーしている場所に、右側から敵が迫っているのがわかるでしょうか。さあ、急いで別の場所へ移動しなければなりません。でも、特定の位置を指して移動させるのは、少々面倒な気がしますよね。では、実際のシーンを見てみましょう。

ご覧になって、わかりましたか? 私は、特に何も操作をしていません。指示がなくても、彼女は勝手に、敵の視界から見えない場所へ移ったのです。プレイヤーが「ホープ」を直接操作するわけではない、という設定が、こんな形で機能しているんですね。
こちらの例は限定的状況下でしたが、本作は室内や狭い通路を行き来する場面ばかりなので、この機能のお世話になることも少なくありません。以上のことからも、本作がステルス要素をそれほどシビアなバランスで考えていないことが見て取れます。

捕まった際、隔離室に連行されるホープを、ドアのロックをハッキングすることで助けています。
プレイヤーとホープが別人物である設定は、こんな形でも生きているのです。
・特殊な世界観と登場人物

最初にも書いた通り、本作の一番の売りはシナリオ面とアドベンチャー要素になります。その魅力の基盤を作っているのは、他ではなかなか見られない怪しげな雰囲気と、特殊な設定からなる世界観。舞台となる施設では、非常に奇妙な部分がいくつも散見されます。
例えば、収容所や更生施設にしては豪華すぎるという点。そして、ここを警備している人間が、軒並み病気や犯罪歴持ちであるという点。脱走しようとしているのに危害を加えられる様子はない点も奇妙です。一体ここは何なのか? 誰が何の目的で、何をしようとしているのか? 無数の謎が終始、プレイヤーを混乱させるでしょう。しかし、それらについて作中で具体的な解説がされることはありません。その理由は、解説役がいないから。

Republique チュートリアルをしてくれる人物はいますが、用語解説まではしてくれません。 むしろ、ついでに語られる無駄話の方が多いですね。

どうやら、プレイヤーがわからない単語に関しても、この世界の人間にとっては当たり前のことのようで、わざわざ説明してくれる人物はいません。よって、会話の中で度々出てくる”到着”や”Republique”と言った語句が何を示すかを知りたければ、プレイヤー自身が推測するしかないのです。その足がかりとして材料になるのが、本筋とは別の横道に隠される収集物になります。その中には、後から思い返したとき、登場人物の考えや行動に納得できるような小さなピースが潜んでいます。

Republique 収集物の状況は、いつでも章ごとに確認できます。1章だけでもけっこうな数がありますね。

収集物は、大きく分けて「ボイスログ」「メール」「禁書の解説」「カセットテープ」など。「ボイスログ」と「メール」は、警備を始めとした施設側の人間たちの会話が収録されています。ここから、きな臭い施設の内情や、彼ら自身の事情を伺い知ることができるでしょう。「禁書の解説」と「カセットテープ」については、少し趣が違います。
それぞれから一例を挙げましょう。まずは”禁書”についてです。内容は「フランケンシュタイン」。

このように、”禁書”は、現実で出版されたものが引用されています。それも、内容に関しての簡単な解説というおまけ付きです。ただしその内容は、かなり極端な解釈を元に説明されているため、まったく参考になりません。とはいえ、現実をベースにした小ネタは奇妙な面白さがあることも確かです。必須ではないけど集めて楽しいのだから、収集物としての魅力は十分と言えるでしょう。
ちなみに、”禁書”を選定した人間は、舞台となる施設の「所長」。解説も当然、彼が行っています。ですから、各解説ではその内容より、そこから推測できる「所長」の人となりに注目すると、より本作への理解が深まるかもしれません。むしろ、私はそこが狙いなんだと思いました。つまりゲーム製作スタッフが、主要となる人物への接触とは異なる形で、彼らの人物像をイメージさせようと工夫しているのだと感じたわけです。

Republique 登場人物の名前はそれぞれ別の色で表示され、視覚的にも誰が誰だか判別しやすくなっています。

「カセットテープ」でも同じことが言えます。内容は反乱者として”処理”された「ゼーガー」の独白です。彼はここで、彼自身の価値観や行動理念、実行してきたことについて記録しています。

実はストーリー上重要なことも暗示していますが、そのことについては終盤までわかりません。
彼に限った話ではありませんが、全体的に声優さんの演技もすばらしいため、そこも要注目です。

こういった敵サイドの内情などは、本来、何の意味もないフレーバーテキストであることが大半。しかし本作においては、いくつかの情報が集まった時、不意に意味をなすことがあります。それは、先の展開を予想するためというより、今まで起きたことへの理由付けという形で与えられるヒント。物語について考えを巡らせるほどに、何かしら発見させてくれます。わからないほど難解でなければ、調べなくてもわかるほど単純でもない、そんな情報の散りばめ方と見せ方の按配が、本作は実に秀逸なのです。

他にも、「フロッピーディスク」からはインディーズゲームの解説が聞けます。
こちらはちゃんとした解説となっているため、知っているゲームだとニヤニヤしながら聞けますよ。

実をいうと、タイトルを冠する『Republique』が何を示すのかは、プロローグの時点で明らかになっています。ただ、それがどんな意味を持ち、何を起こしたのかまで紐解こうとすると、必要となる鍵はひとつでは足りません。あらゆる物事に関するいきさつを知る必要があるのです。そのため、複雑に絡み合った情報について考えを巡らせていると、ひとつの推測に行き着く瞬間があります。遠く離れた点と点が幾重にも重なった仮説の中で、きれいに繋がるのです。私は、本作を始めてからというもの、プレイしていない時間すらも含めて様々な疑問について考え続けていました。それは、決して短い時間ではありませんでした。そのことに気がついた時、この作品にある謎とその魅力、それを知りたくなるように仕向けられた演出のすばらしさを実感しました。何より、私自身がこの作品の虜になっていたのです。

プロローグから。字幕部分は編集で大きくしてます。なお、画質設定は最低値です。ご了承を。
今更ではありますが、日本語完備ですよ。

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