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バーチャルとリアルが混ざった先は、地獄『>observer_』

ゲームタイトル:
開発元:
パブリッシャー:
定価:
2,980円
Litchi 筆者:Litchi Steam プロフィール

『>observer_』は、近未来を下地にした”サイバーパンク”と呼ばれる世界観を持つ、一人称アドベンチャーゲームです。
時は2084年。特殊な警察組織である「observer」の一人、「ラザルスキ」の元に、消息不明だった息子からの連絡がありました。ですが、なにやら様子がおかしい。彼は息子に会いに行くべく発信源を逆探知し、スラム街に向かいます。そこで調査を始めようとした最中、とあるトラブルに巻き込まれてしまうところから、物語の幕が上がります。

>observer_ AR表示が溢れ、そのくせ無骨な機械類や太いコードがむき出しで、ゴミや落書きも散乱。
好きな人にはたまらない、荒廃した雰囲気を持っています。

調査を始めてまもなく、「ラザルスキ」は息子の部屋へと辿りつきます。そこで見つけたのは、なんと、首の無い死体。状況的には息子であることが疑われるものの、現場を調べても身分を示すものはありません。彼は、その死体が息子でないことを祈りながら、調査の手をスラム街へと伸ばしていきます。
ここで、もう一つ事件が起こります。"何らかのトラブル"により「ロックダウン」と呼ばれるセキュリティが発動するのです。その影響でスラム街全域は外部との通信断絶、各部屋はロックされ完全な密室になりました。あちこちから漂い始めた事件の香りに包まれるこの街で、「ラザルスキ」が邂逅するものは一体何なのでしょうか……。
……というのが、大まかなストーリーになります。

>observer_
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「ロックダウン」の仕様上、住民は部屋から出られないため、聞き込みはインターホン越しになります。
そのため、作中で姿を拝める"生きている"人間は、ここら一帯の管理人ぐらいです。

さて、本稿はあらすじの説明から入ったわけですが、これには理由があります。というのも、本作の売りが、近未来的な”世界観”、それを下地にした”ストーリー”、そして、この二つをより特別なものにしている”演出”にあるからです。
反面、ゲーム的な部分は極めてシンプルな作りをしており、難易度はあってないようなもの。戦闘シーンを始めアクションパートはおろか、難解なパズルを解く場面もありません。しかし、その簡素さはまったく気になりません。それだけ、見せ方に魅力が溢れているからですね。ボリュームは、長くて8時間ほどですが、プレイし終わった後、とても強い印象が残りました。おそらくこの先、本作で見たものを忘れることは無いでしょう。

>observer_ 日本語も標準搭載されています。
少し変な言葉使いの部分もありますが、意味は十分わかりますので、ご愛嬌ですね。

続いて、具体的なゲームシステムについて。いくらゲーム性が薄いといえ、事件があり、警察が主人公なら、当然捜査パートがあります。サイバーパンクな世界観となれば、その特長を生かしたやり方があるというものです。
事件の調査において「ラザルスキ」は特殊なツール群を用います。このツールは主にスキャンを中心に行いますが、その使用感を例えるなら「バットマン(アーカムシリーズ)」で見られるようなものです。

字幕部分を編集で拡大しています。

一口にスキャンといっても、得られる情報は多岐にわたります。この世界の人間は肉体に電子機器を埋め込んでいたり、その一部を機械化しているので、ICチップのようなパーツをスキャンすれば、それだけで大抵のことがわかります。他にも、傷跡や血痕といった非電子的な情報も一発で照会。パスワードのハッキングすらも息をするようにワンボタンです。さすがは未来といったところでしょうか。このことから、プレイヤーが行うことといえば、スキャン対象を探し、その情報を分析、考察する程度になります。
やはり、操作面はかなりお手軽ではありますが、その分雰囲気はばっちり。物語へ思考を巡らせるお手伝いという意味で、この捜査パートは存在するのでしょうね。

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窓のようにフィルター?がAR表示されており、実に近未来感がありますね。
……これが正常な光景です。よく覚えておいてください。

と、ここで突然ですが少しお話を中断し、注意をひとつ。
この先、刺激的なSSや動画があります。
ご覧の方はあらかじめ、心に活を入れてから続きをお読みください。

>observer_ 「ラザルスキ」の外観で行間稼ぎ。
演じているのは俳優の「ルトガー・ハウアー」氏です。



なぜこんなことを言うのかというと……実は本作が「ホラーゲーム」だからです。それも製作はあの『Layers of Fear』を作ったクリエイター陣。その恐ろしさが折り紙つきであることも伺い知れましょう。
本作は、サイバーパンクでありながらも、それと見事に調和を果たした異色の「サイケデリック・ホラーゲーム」です。そういうわけなので、苦手な方はお気をつけください。

公式トレーラーから。精神的な部分を揺さぶるような演出が随所に挟まれています。
その手の映像に耐性の無い方はご注意ください。また、音量にもご注意を。

では、本作の”ホラー”とは、どう恐ろしいのでしょう。まずは以下のSSをご覧ください。
上で貼ったSSとほぼ同じアングルで撮りました。まったく別の場所というわけではありません。同じ場所からの撮影です。当然、特殊なギミックが作動してステージが変化した、というわけでもありません。

>observer_
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近未来感はどこへやら。壁や扉を始め、あらゆるものが肉肉しくなっていますね。

そのカラクリは"「ラザルスキ」の頭がおかしくなった"ことに起因します。
度重なるショッキングな体験により、世界の見え方が変わってしまったのです。いわゆる”SAN値※”が無くなった、というわけですね。原因となったのは、調査における最重要プロセス「記憶の追体験」にあります。
「observer」の人間である「ラザルスキ」は、頭の中に埋め込まれている”神経インプラント”をハッキングすることで、記憶を読み取ることができる特殊な技術を持っているのです。
※ 精神面におけるHPのようなもの。主にクトゥルフ系TRPGで使われるパラメータのひとつで、語源は「正気」を意味する「Sanity」。

>observer_

ただ、ここで問題になるのがその記憶の解読方。そう、それこそが追体験です。どうやって死んだのか、なにを見たのか、そして感じたのか……我が身で余すところなく味わうわけですね。
はい、既に嫌な予感がした人は正解です。記憶を除く対象となる人間は軒並み、何らかの事件の被害者です。大目標こそ「息子の行方探し」ではありますが、その手がかりを得るためには、他の事件へ足を突っ込む必要があります。なので、凄惨な殺され方をしている人間の記憶を探る場面も出てくるわけです。そうして読み取ることになる記憶は当然、ゴールに当たる場面が”死”に直結しています。そんな道程の記憶が碌なものであるわけありませんよね。追体験なんて、以ての外でしょう。

>observer_ 「記憶の世界」は混沌そのもの。さながら、夢のようにおぼろげで、脈絡の無い場面転換が多発します。

それどころか、被害者たちは違法ドラッグの常習犯だったり、精神を病んだ人間だったりするわけです。そんな人たちの見る世界が、常人の見るそれと同じわけがありません。
彼らに根深く残ったトラウマや、事件のきっかけになった強烈な"何か"が凝縮したイメージとして形を伴い、記憶世界の構成因子として組み込まれています。あまつさえ、その中を進まなければならないときたら、それはもうおぞましい体験の一言でしょう。頭がおかしくなるのも当然です。

>observer_ 幽霊や化け物に襲われることだけがホラーだとは限らないのです。

ここまでのSSだけでもお分かりの通り、そんな記憶の世界は無茶苦茶で非現実的です。しかしそれも近未来、バーチャルな世界観の中で描かれると、途端に180度味付けが変わります。なぜなら、現実の世界において自然と浮かぶ情報表示や、視界を覆うオーバーレイ群が、”本当にそこにあるもの”自体を認識しづらくしているからですね。果たして、今見ているものは「ARが投影された現実世界の光景」か「歪んだ記憶世界の光景」か。次第に狂気を増していく「ラザルスキ」の認識が不安定になるほど、異常な光景には説得力のような強い印象が付加され、恐怖を煽ってきます。
そう、例えばあなたが悪夢を見ているとき、それを夢だと自覚していながら脱出できない、ということを想像してみてください。彼の見ている光景の恐ろしさも、想像に難くないのではないでしょうか。
幻覚と現実、その全てが混ざって境目がわからなくなってしまったとき、あらゆる価値観や常識は意味を無くします。困惑と疑いの中で、本来あっても不思議でない物が”正体不明”に変貌する瞬間『>observer_』流の”ホラー”が牙をむくのです。

とある人物の記憶のシーンから。製作陣の精神を疑いますね!
もちろんそれは、こと本作に限り褒め言葉になりますが。

※激しい明滅・音量・画面酔いにご注意ください!※

※映像や音声の乱れは全て、演出によるものです。※

気の触れたような印象が強く残る『>observer_』ですが、演出だけでなく、ストーリー部分も大変評価できる出来でした。数多のホラーゲームにおいては「説明のできない超常現象だった」という投げっぱなしのオチがありがちですが、本作は違います。どこかの誰かが、明確な目的で意図的に事件を起こしているのです。一見すると繋がりの無いことも、誰かの計画の内、あるいは想定外のことが偶然重なってできた一連のお話になっています。
狂った世界として紹介した記憶の中ですら、きちんと意味があるように感じました。そこで表現された演出には、たくさんの暗喩が溢れているように思えたからです。だからこそ、バグやPCの故障と思い違えてしまいかねない事象の数々が、ただ奇をてらったものと感じさせない、特有のリアリティを持ち合わせていたのでしょう。
製作陣は『Layers of Fear』で得た名声が、偶然や間違いではなかったことを、本作で見事に証明してみせたのです。

まるで、不意に子供を手にかけてしまったかのような気持ち悪さを感じ、クるものがありました。

※子供の泣き声に耐性の無い方はご注意ください!※

今、あなたが見ている世界が、他の人間と同じ景色であることは、誰にも保障できません。あなただけに、そう見えているだけなのかもしれないのです。バーチャルとリアルが同じものを指す時代は、既に来ています。本作で描かれた事件が訪れるのももしかすると、そう遠くないことなのもしれません。その一端に『>observer_』を通じて触れてみてはいかがでしょうか。

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