対話型AIと臨む、「2012年宇宙の旅」の形『Event[0]』

ゲームタイトルEvent[0]
    開発元Ocelot Society
パブリッシャーOcelot Society
     定価:1,980円

筆者:HayanieMozu
Steam プロフィール

Event[0]

船外活動を済ませた私はターミナルを叩いた。

「エアロックを開けてくれ」

酸素の残量も少ないため手短に伝えるが、ターミナルの向こう側に承諾の気配はなく、エアロックは沈黙を保ち続けている。息苦しさと焦燥とが敵対心を露わにするのも気にせず会話を続ける。ヘルメット内には残量わずかを伝えるアラームが溢れんばかりに鳴り響き、宇宙が静寂に包まれているのが信じられなくなるほどの音を放っている。それを知ってか知らずか、彼はポツリとこう漏らした。

「常々気になってたんだけど、人が窒息死するときってどんな感じなのかな」

――というのが私が本作で体験したもっとも印象深いことのひとつだ。このあと謝り倒してなんとか助けてもらったのだが、謝った相手というのは人ではなくAIである。名をKAIZENという。

今回お届けする『Event[0]』は一人称視点のアドベンチャーゲーム。2012年を舞台とした本作は映画『2001年宇宙の旅』の影響を受けているそうで、ひとっこひとりいない宇宙船Nautilusで船内サポート用AI「KAIZEN」と対話しながら秘められた過去に迫る、という内容となっている。最大の特徴はKAIZENとの会話時にキーボードからメッセージを直接入力する点だ。

Event[0] このキャラクターがKAIZEN。1985年製
Event[0] 冒頭にのみ、ノベルゲームのような選択肢が登場する

KAIZENとの会話は各所に置かれたターミナルを通して行う。主人公はドアを開けることすらままならないので、ドアを開けてほしかったら「Can you open the door?」といった具合に頼めばよい。頼む文言は「Would you open the door?」と丁寧でもいいし、「Open the door.」とぶっきらぼうに言ってもよい。ただし、KAIZENには感情に相当するものがあり、仲が険悪になると強情になってドアを開けてくれなくなったり、謝罪を要求してきたりする。プレイヤーはKAIZENがいなければほとんど何もできないので、言葉遣いには注意したほうがいいだろう。

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ターミナルを通した会話はこのような感じ

この気ままさというか人間味を感じさせる部分も、プレイヤーを退屈させないスパイスとしてほどよく効いており、ともすれば「ただただ面倒」で片付けられてしまうところをうまく緩和している。AIとタイピングして会話するという、現実世界とさして変わらぬ行為によって得られる没入感もよい。

会話もかなり豊富で「喉が渇いた」とか「船員はいないのか?」といった質問を投げかけても答えてくれるのはうれしいところだ。極稀に同じことを繰り返してしまう場面もあるが、意思疎通を図ろうと試行錯誤するのにも愛しさのようなものを感じる。冒頭で述べた一見ネタバレに見えそうな展開も、膨大な会話生成によって生み出されたたものであり、人によっては経験せずに終わることもある(事実、私の2周めのプレイではそうはならなかった)のもおもしろい。逆に言えばもっと過激な会話がなされる可能性だって(おそらく)あるのだ。マルチエンディングなのでリプレイも楽しめる。

ロケーションの魅力も相当なものだ。ちょっとレトロな味わいのある宇宙船Nautilusは広さこそないものの、光の加減や通路に乱雑に散らばる物が廃墟を想起させる一方、ベッドルームやリビングルームは先ほどまで使っていたかのような生活感が残っており、独特な雰囲気を作り上げている。

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なお、タイピングの必要から操作は特殊なものになっているが、素早い的確な操作を求められるようなゲームではないのでその点はあまり心配いらない。オプションからFPS準拠の操作に変更も可能だ。

惜しむらくは本作がローカライズされていないことだろう。会話生成のことも考えると今後のローカライズもほとんど期待できそうにない。会話がメインなのでハードルは高いが、急ぐ必要はないので辞書さえ引ければプレイ自体は可能だ。英語が苦手な私もクリアはできたし、言語的な問題であきらめるにはあまりに惜しいと断言したい。

ときに気分屋で、ときに冗談もかましてくるKAIZEN、そして彼との数時間の旅路はGLaDOSやClaptrap、BT、Ethanといった名だたるAIキャラクターたちとのそれに引けを取らない体験だ。その根底にあるのはプレイヤーごとに異なった会話を通じて築かれるユニークな関係性であり、ほかに類を見ないほどのエモーショナルな体験を味あわせてくれる。生殺与奪を握られるような敵対も、長く連れ添ったかのような友好も、あなたとKAIZENの会話次第なのだ。

そうそう、最初のターミナルログイン時はちゃんと自分の名前を入れてほしい。KAIZENは登録した名前でちゃんと呼びかけてくれるのだから。

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