正しい見分け方は食べてみてダメだったら毒キノコ!『Mushroom 11』

ゲームタイトル:
開発元:
パブリッシャー:
定価:
1,480円
OST:
980円
GREENER 筆者:GREENER Steam プロフィール

およそ創作というものは模倣からはじまるという。誰かがいい物を思いつくと真似されるのが世の習い。二匹目、三匹目のドジョウも変わらず柳の下にいたりして、気づけば新たなジャンルとして確立していることも珍しくない。

ところが本作には誰も追随しそうにない。間違いなく美点があるにも関わらず、フォロワーどころか自分で続編を出すことすら難しそうだ。

今回ご紹介するのは、そんな系統樹で言えば枝の先っちょ、進化の分岐の袋小路、放っておいても勝手に滅びそうなOne-Hit Wonderなゲームである。

Mushroom 11 アームが開閉しないクレーンにだって潜り込むぞ

さて本作は横スクロールのジャンプACTゲーム……ではなく、似て非なるものである。陸地の断面が見える真横からの視点で、限られた足場を伝ってゴールへ到達することが目的ではある。ところが主人公はMushroomのタイトル通り菌類、キノコなのである。当然(?)それは一切の操作を受け付けない。

かと言って筆者が個人的に「要介護ゲー」と呼んでいるジャンルの様に、キャラが勝手に歩くので道を繋げたり障害を退かしたり甲斐甲斐しく世話を焼いてやる類のゲームともちょっとちがう。

キノコとも縁が深い「要介護ゲー」代表例 大体こんなだったはず

キノコが歩くわけがないのだ(※)。もちろんつついたり脅かしたら逃げ出すというものでもない。南方熊楠が研究していたという事実ばかりが有名で、特性についてはついぞ知らない粘菌であればそんなこともあるかもしれないが、いずれにせよ意志の疎通は不可能である。

※ ただし三輪車には乗る

そこでプレイヤーに与えられたのが「魔法の消しゴム」だ。これを使って敵や障害ではなく、『主人公を』削る。マウスの左クリックがでっかい消しゴムで、右クリックがちいさい消しゴム。操作は以上だ。

Mushroom 11

本作の真菌は不定形ながらも体積だけは一定を保とうとする性質があり、ざくりと体をえぐってもすぐに膨らんで元の大きさに戻る。

蓄えていた栄養が尽きるのか空中で削り続けた場合だけはその限りではないが、どこかに触れさえすればあっと言う間に元通り。繁殖なのか成長なのかは知らないがとにかくしぶとい。

また仮に分断したとしても不思議な力でリンクしており、一方を削ると他方がそれを感知して失われた分を補ったりと、消しゴム独力での根絶は不可能になっている。なんの遠慮もいらない。

菌が触れるとそこから汚染が広がり全体が死滅してしまう障害もあるが、そんな時も慌てず騒がず患部周辺をぐりっとえぐればそれで済む。便利な体である。

このゲーム、メカニズムとしてはこれだけだ。応用編などない。かっこよく言えば、消しゴムこそが基礎にして奥義なのだ。

それでどうやって菌を動かすかというと、ゲーム冒頭でシンプルにこう教えられる。

消せ、と。

魔法の消しゴムでどこを削りとるかはプレイヤーの自由。だがどこを膨らませてどんな形に再生するかは菌の自由だ。多くの場合それはこちらの歓迎しないものである。

しかし相手は所詮菌だ。その上こちらには強権がある。菌の思惑も事情も知ったこっちゃない。左に進ませたいのであれば、菌の右側をひたすら削り続ければいいのだ。するとたまさか左に伸びた部分だけが生き残り、結果として再生は左へ左へと行われる。

一見すると光の環で押しているだけにも見えるかもしれないが、菌は光の環の上に乗れはしない。あくまで消去と再生なのである。

この無慈悲な追い立てによって、なんとなく移動っぽい動作が実現される。行きたい場所にコピーを作って元の位置のオリジナルを消去するようなこの手順を移動と呼んでいいのかは若干疑問が残るが、デジタルデータであれば間違いなくムーヴなのできっとこれは移動なのだ。

ちなみに菌体は地表にへばりついてはいないので、行きたい方向の足元を崩してやると倒れる。そのまま後ろ側ではなく前側の足元を削り続けても移動できなくはない。

平地でやると「動歩行」っぽい

だがこの方法は下り坂では有効だが、平地では遅いしなにより上り坂を登れないのでやっぱり基本は「追い立て」なのだった。


こうして気まぐれな菌に振り回されたり、こっちの都合で菌を振り回したりしてゴールを目指す。間違いなくやったことのない作業である。素直に面白い。

溶岩に触れないように慎重に……

操作感はペイントツールでの消しゴムそのものであり、入力で難しいことはなにもない。思った通りの操作ができている。なのに必ずしも思った通りの結果にはならない。

あっちを削りこっちを削り、削った所為で他が伸びるのだから、タンスの引き出しを閉めたら別の引き出しが勝手に飛び出たみたいなエンドレス具合だ。実にままならない。そのままならなさが心地よい。

最初に述べた通り、これ以上の発展だけは望めそうにない。その代わり、この方面で発生し得る楽しさは残さず拾ってあるようなゲームだ。拐われたお姫様にばかり目が行きがちな世の中だけど、ちょっとキノコとも向き合ってみよう。振り回されるのも楽しいと感じるようになったら、きっとそれは恋である。

……ちがうかも知れない。

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