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言霊。古来より人は、言葉には力があると信じてきた。『In Verbis Virtus』

ゲームタイトルIn Verbis Virtus
    開発元Indomitus Games
パブリッシャーMeridian4
     定価:1,980円

筆者:GREENER
Steam プロフィール

口プレイ(くちぷれい)という言葉がある。セクシャルな意味ではない。野次、煽り、虚偽の申告による思考の誘導。球界ではささやき戦術というほうが通りがいいだろうか、舌先三寸で対戦相手の集中を乱し判断を狂わせる盤外戦術である。今回ご紹介するのはそれとは全く関係ない意味において、口プレイゲーと呼びたくなるゲームだ。

砂漠の中に岸壁を削って作られた遺跡の入り口が…… あ、これペトラ遺跡だ!

さて、毎回使うキーの話から入っているような気がするが、どんなゲームかを把握するために早い段階で筆者が知りたい項目なのでお付き合い頂こう。本作も基幹部分は凡常のFPSであり、WASDで歩いてSpaceでジャンプし左Shiftで走ってESCでメニューが開きJキーではジャーナルが開く。ここまではなんら特筆すべき点はない。ちょいと変わっているのがEキーで、普通ならばドアを開けたりボタンを押したりと多用途に使えるUSEキーであるところだが、本作ではたったひとつの機能しかない。コンフィグでの項目名はExamine inscription、すなわち碑文の調査だ。

In Verbis Virtus
いざ遺跡の中へ

しかもキーボードで反応するキーはこの9個で全てである。どうやって灯りをつけるのか、どうやってドアを開けるのか、どうやって箱を持ち上げるのか、はたまたどうやって敵を倒すのか。答えはすべて口にある。つまり、実際にプレイヤーが自身の口で呪文を唱えることで魔法を使ってなんとかするのだ。

In Verbis Virtus
薄暗い洞窟のなかに碑文を記したモニュメントが

本作では石碑を解読する度にMaha'kiと呼ばれる独自言語の呪文を覚える。ジャーナルでその単語をクリックすればお手本音声が再生されるので、あとはマウスの左ボタンを押さえつつマイクに向かってその通りに発音するだけ。長々詠唱するのではなく、ぽんと使いたい魔法の名前を言うスタイルだが、正しく認識されれば主人公の手には力が宿る。ファミコンのⅡコンがやりたくても出来なかった機能。うっかり思いついちゃったからには作らざるを得ないという、製作側の人間にとってはある種の呪いのようなアイデアだ。

In Verbis Virtus
偏光ダイヤを経由して感光装置に光を当てる

そんなこんなで主人公は謎の遺跡で次々と魔法を身につけ、時には異形の怪物を燃やし、時には危険な仕掛けを凍てつかせ、軽いパズルを解いてはまた奥へ。行けば行くほどに高度な文明を感じさせる内装へと様変わりしていく、得体のしれない建造物をひとり征くといった内容である。

灯りをともせば暗闇の中に足場が浮かぶ

肝心のゲームのほうだが、これがなんというか評価に迷う。元同級生が集って会社を興したという開発元はこれがデビュー作で色々と荒削りだ。面白いかと問われるとちと首肯しにくい。しかし楽しいかと訊きなおして貰えるのなら答えはYesだ。そりゃ近年では音声認識は珍しくないが、時間やら予定やら答えてくれても普通ファイヤボールを撃たせてはくれない。魔法使いごっこを楽しむという観点においては本作は優秀だ。

In Verbis Virtus
このマップ取り外して持って行かせてよ……

そしてここが大事なところなのだが、本作を遊ぶとおのずから悟ることがある。ゲームが提供する材料だけでなく、それを咀嚼して得られる着想までを評価に含めてもいいのなら、これはもうはっきりと面白い。何がって、魔法とは不便なのである。ゲームのシステムが不親切だという意味ではない。唱えないと発動しないという前提条件がすでに不便なのだ。この認識に至ることがなんとも可笑しい。

例えば、人里離れた山奥の踏み分け道を行く最中。足を滑らせ川に落ち、服はずぶ濡れ荷物は流され日も暮れ始めて辺りからは野犬の声が。そこで旅の連れが慌てず騒がず口の中で何事か呟くとその掌には赫々とした炎が灯る。やだカッコいい、この人になら抱かれてもいい、いや、アタイを抱いて! となるのはそんな時である。そりゃもう下着までびっちょりだ。もちろん川に落ちたからだが。要するに棒っ切れを両手で挟んで拝むように錐揉みする例のアレと比べるから簡単に火を熾したように感じるのであって、そもそもの比較対象が格下なのだ。

着弾点にあとで起爆させられる文字を刻む炎の呪文

ライターがあるなら使えばいいし、着火剤があるなら山盛りかければいい。黙ってたってそれで目的は達せる。正しい装備さえあれば、精神統一の必要もなくスルメかなにかをかじりながらだって火は着けられる。魔法の汎用性がいくら高くとも、単一の目的に限ればそれ専用に作られた道具の利便性には及ばないのだ。(※1)

※1 もちろん科学の力ではどうにもならない部分はいくらでもある。

その上これはPCゲームなのである。我々の目の前にはキーボードという100を超えるボタンが並んだ入力機器がある。大概のゲームは(あれば)懐中電灯ぐらいキーひとつでオンオフできる。なのにこっちは音声入力だ。常に口をフリーに保たなくてはならない。やるとわかるがこれは面倒くさい!

この唱えたら本当に魔法がでちゃう感覚と、魔法とは便利なものという根拠のない思い込みを無残に打ち砕かれる感覚はかなり楽しい。よくわからない笑いがこみ上げる。思えば故藤子・F・不二雄先生の21エモンでも銀河系で一番科学が発達しているのは、自室にいながらにしてボタンをポンと押すだけで何でもできるボタンポン星だった(※2)。この意外なような、それでいて納得するような奇妙な感覚を味わえたことだけでも、このゲームをやった価値はあったなと筆者は思う。

※2 劇中では二番目と呼ばれているが、一番のボタンをチラリと見るだけで何でもできるボタンチラリ星は没落したので繰り上げ一位とする。

こんな乙女心にキュンキュン来る魔法陣も出せちゃうぞ

また開発元の意図した遊び方ではないだろうが、本作の呪文はファイルを編集することで好きに設定することができる。自分の考えた魔法を叫べばそれが発動するのだ。これは嬉しい。普段は脳の隅っこで大人しく体育座りしてる子供ゴコロくんもヨダレを垂らして大はしゃぎである。詳細は以前書いたガイドにまとめてあるので活用されたし。

http://steamcommunity.com/sharedfiles/filedetails/?id=466009519

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